カテゴリ:読んだ本
日本経済の真実―ある日、この国は破産します 日本テレビ系列土曜日朝8時からの「ウェークアップ!ぷらす」キャスターの辛坊治郎氏が書いた本ということで、興味を持って読んだ。共著者の辛坊正記氏は実兄で、住友銀行でMBAをとったりした経済畑の人。 本書の半分以上は、暴論に騙されないための日本経済入門、と題してGDPの解説から始まり、三面等価の原則(生産、分配、支出の額はGDPを3つの側面から見たもので、同じものであること)、経済成長とはGDPが大きくなること、経済成長しなければ分配が少なくなり給料が増えないこと、GDPの成長の3要素が、労働力、生産設備、技術、であること、少子化は労働力の絶対量が減少するためGDP成長の阻害要因であること、貯蓄=投資であり、現在貯蓄の多くが国債で公的投資にまわっていること、などが語られます。 一部難しいところはあるものの、図表も多く取り入れて、わかりやすく解説する工夫がされています。こうして、日本経済の基本を解説したところで、高度成長からバブル、失われた20年、小泉・竹中改革、政権交代への失望と、歴史を追って経済的に検証しています。 今の日本政府の借金は高度成長が終わってからも、高度成長並みの経済成長を目指してケインズ的公的支出を増やしたことに端を発している。しかし、今になって明らかになったことは、この財政政策が一時的なものでしかなく、これまで日本国内で成長する産業が育たなかったこともあって、日本経済は安定成長路線への転換に失敗したということ。そして、貯蓄率がこのまま低下していくと、これまで郵貯や銀行、保険会社などが日本国内で国債を購入していたけれど、どこかで日本国内だけでは賄いきれなくなって、国債が払い戻せない日がくるかもしれない。 小泉・竹中時代を株価、経済成長率、失業率、財政状態、ジニ係数のデータで見て、功績を評価しています。「聖域なき構造改革」「改革なくして成長なし」「官から民へ」「中央から地方へ」経済活動で政府の関与を減らし、既得権益を守る不合理な規制を撤廃して、民間活力で景気全体を底上げする戦略は正しいが、セーフティネットを作らなかったのが最大の問題である、としています。 ともかく日本を破滅に導かないためにも、経済成長しなければ。労働力は絶対的に減少するんだから、日本国内で付加価値を高めるためには技術革新をしていくことが必要なんだな。 辛坊さんは、激しくメディア批判をしているけれど、影響力あるメディアの一員なんだから、なんとかして、異常なメディアを変えていく方向に持っていってもらいたいけどね。ジャーナリズムのかけらもない貧困なメディアがほとんどの現状を何とかしてもらいたいものです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.12.03 00:03:06
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