山口恵以子「夜の塩」
昭和30年代が舞台のサスペンスで、時代背景が古いですが面白かったです。名門私立女子校で英語教師をしていた篠田十希子は、幸せの絶頂にいました。同じ学校の英語教師の同僚と婚約して、結婚まであと少しというとき、同窓会に行って来ると言っていた母親が突然亡くなったと知らされます。商社の年下の妻子ある男性と心中したというのです。夫を戦争で亡くし、一人娘を抱えて友人が経営する料亭で必死に働きながら、十希子を大学まで行かせてくれて、娘の結婚を何より喜んでいたのです。十希子には、母が心中するなんて信じられませんでした。夜の塩【電子書籍】[ 山口恵以子 ]そして、教師としての職を失い、結婚も相手の親の反対で破談になりました。真相を確かめたくて、母と同じお店の仲居として働くことを決意します。まるで松本清張の小説を読んでいるような錯覚を覚えました。昭和という時代背景、強く逞しく世渡りしていく女性の姿に息もつかず読んでしまいました。女は強い方がいい、読み終わったあとの感想でした。昭和時代を生きてきたので時代背景がすんなり理解できましたが、若い人にはチンプンカンプンの描写もあるかもしれませんね。食堂のおばちゃん (ハルキ文庫) [ 山口恵以子 ]山口恵以子さんの小説は初めて読みました。「食堂のおばちゃん」という作品は知っていましたが、同じ作家さんとは知りませんでした。婚活食堂 1 (PHP文芸文庫) [ 山口 恵以子 ]シリーズもありますね。