昨夏より年金基金の運用で7兆円の損が出た
久しぶりに基本的なテーマを取り上げます。「マッチポンプ」 とは、マッチで火をつけてポンプで火を消す様なモノだということですが、踏み込んで描写をするとこうなります。 蠢く影から一瞬閃光が走り男の横顔が浮かびすぐに消えた。 しかし、微かに残った光が地面に近づき、そらに弱まったかと思われ刹那、不気味な男のほほえみが見えた気がした。光の中に黒いすすのようなものが立ち上りはじめる。いやそれを確認できるまで「光」が成長している、炎だ。かがんでいた男のシルエットが炎の反対に長く伸びる。 炎の成長を立ち上がり眺めていた。男の腰到達した。 周囲の可燃物に浸食の魔手を伸ばしはじめたときに男は叫んだ。「火事だ!」 声を発した方に男は走り出す。男はしばし後に戻ってくる。 野次馬と火がついた建物の持ち主の絶望とで騒然としている現場で男は再び叫んだ。「どいてください! 消防署です」 ・・・放火犯が消防署員(または団員)だったという三面記事がときどき取り沙汰されますが「マッチポンプ」とはこういうことです。 火をつけ火を消したがるのはメディアの習性です。 はい、これが基本的なテーマである由縁です。「やってよいことでしょうか?」 ということ。 自己批判をすればできないようなことを垂れ流します。「日雇い派遣禁止」 する方向に進んでいます。 グッドウィルやフルキャストという企業の「問題点」を過大に取り上げているというのが私の感覚で、本質はそこにはありません。 先日もとある確かな野党の地方議員と意見交換をした際に、日雇いがイカンといい、それは小泉構造改革の流れにある格差に発するものだと主張します。 知人を介してお会いしたのですが、なかなかな好人物ですので情報を提供しました。「元請けから一人頭32000円、日雇いに8000円。 24000円のピンハネ。これ20年以上の前の話で、 元請けは今もバリバリの一部上場ゼネコン。 で、構造改革と格差ってなに?」 元請けからの支払いが32000円だったか34000円かはうろ覚えで、ベテラン職人ともなれば日雇いで12000円ほど支払うケースもありましたが、その日の朝にいって雇って貰う「今風」 の日雇いはこの金額でした。ここの社長と亡父が友達で、私は年齢を誤魔化して貰い現場で働き、もらった手取りが8000円で、いわゆる学生バイトなら6000円だということで、特別に便宜を図って貰ったと知りました。 75%ピンハネされていたのですが。 仕事の内容はいわゆる「土方」です。道路工事から建築現場で私の現場はとある女子校の改築でした。同僚はみなオジサンで一番若くて25歳。当時16歳の私の目にはオジサンでした。 食事の時、現場で、行き帰りで交わす会話は「低俗」です。 下半身とギャンブルと飲み屋のネタが永遠に続きます。 現場へ向かう移動車の定員オーバーは当たり前で幌付きの荷台に座るのは日常です。私はどこからともなく「社長とのつながり」 が、知れ渡ったようで特別扱いを受けました。どこかというと「助手席のあしもと」 で、荷台よりマシなここに体育座りをします。 頭の上には先輩作業員の泥だらけの足がアーチ橋のようにかかります。時にタバコの灰が落ちてきますので定期的に見上げなければ危険です。智恵子が見ていた東京はこんなのだったのだろうかと呟きました。 ここでこの会社をイカンというのは簡単ですが、それでも当時は高校生のアルバイトは時給550円が相場で、日払いで貰える条件は魅力でした。 昨今の論調ではこういわれることでしょう。「そうして搾取が常態化して貧困が固定化される」 経験者としていいます。馬鹿こくでねぇと。 私は学びました。「こんな現場に染まりたくない」 搾取を知っていたからではありません。そもそもそこの社長が大手ゼネコンから受注できていたのは、昔のやんちゃ坊主時代からの人脈で、彼がなければ仕事そのものがなく、搾取は彼の人脈に対する手数料です。そしてそれがイヤなら、もっと安い給料や契約期間の長い労働だって選択できるのです。私たちは奴隷ではないのですから。しかし、前述の通りの下品な現場です。そこでの希望は週末の馬券だけです。 この経験が後のフリータースパイラルから私を救ったといっても過言ではありません。 つまり劣悪な労働環境だとしても自分で選択したのであればそこから学ぶことは多く、経験として活かすか否かは本人の問題で、悪質な搾取を繰り返す企業の「問題点」と混同するのは排泄物と大豆発酵調味料とを比較するのに等しい愚挙なのです。 問題の本質はこうです。「誰かのせいにする『正当化』をすり込んだ教育」 ところがここには踏み込まずに「搾取された労働者=被害者」 と時代錯誤なイデオロギーのまま報じます。 1年前をおぼえているでしょうか。「空前の売り手市場」 として、バブル期以来の大学生の就職事情が活況でと大騒ぎしていたことを。ならばそのとき日雇いだった人はどうして就職できなかったのでしょうか? 学歴? 新卒じゃないから? ウソです。 元祖バブルを経験しました。当時は名前さえ書ければ正社員になれる会社が沢山あり、ここ数年の就職バブルでも採用できない中小企業では同じ状況にありました。 また就職氷河期と大騒ぎしていた時代でも、就職情報誌が廃刊することはありませんでした。 就職口はいまも昔もあります。 ただ「自分の理想の会社じゃない」だけのことです。 就職氷河期を煽り、オジサン達のリストラを騒ぎ、日雇い派遣に怒りを示し、就職バブルに浮かれ、ここに来ての「採用控え」を嘆きと共に報じます。 これは「就職」にだけ絞った一例です。 火をつけて問題視し火を消します。 サブプライムも原油高もサッカー日本代表もリア・ディゾンの結婚も同じです。私たちは冷静に放火魔を見つめなければなりません。「朱に交われば赤くなる」 といいます。放火魔のお仲間も油断なりません。 以前は「お茶の間視点」で評価していた荻原博子さんの暴走が止まりません。 彼女はワイドショーをはしごしてこう叫びます。「サブプライムの余波で年金支給が遅くなる」 彼女のブログに記された理由は「昨夏より年金基金の運用で7兆円の損が出た」http://kurasse.jp/member/ogiwara/note/115969 です。そして厚生労働省年金局をみるとこうあります。平成18年度 |平成17年度 |平成16年度 |平成15年度4兆5,669億円|9兆8,344億円|3兆9,588億円|6兆8,714億円http://www.mhlw.go.jp/topics/nenkin/zaisei/tsumitate/kekka/index.html 25兆2315億円。一昨年前からの4年間での運用益です。 つまり、この1年で7兆損していますが、その前からの通算で見るとま18兆円のプラスなのです。もちろん、厚労省の発表する数字なのでこれが「偽装」されていることもあるのかも知れませんが、「下落した局面」 だけで危機を煽るものに投資を語る資格はありません。 彼女の論を裏付ける投資の手法があるとすれば定期預金だけです。しかし、これも銀行が破綻すれば保証の限りではありませんが、論外の数字を持ち出して不安を煽るのは大人の所作ではなく、そして問います。「やってよいことでしょうか?」 彼女は年金の不備と自説の「生活防衛」を火消しのポンプとして話をまとめます。 この国の将来リスク係数は政治よりもメディアと、その周辺にいる連中が高めています。