○●●遊女asome●●○

2005/07/01(金)12:30

映画「マクダレンの祈り」

遊女aosmeの「映画とドラマ」(110)

2002年のベネチア映画祭の金の獅子賞をとった作品ですが、非常に衝撃的な作品です。 J21さんのHPでこの映画のことを知り、非常に興味が湧き見てみました。 この「マクダレンの祈り」は、アイルランドに存在した「堕落した女性を更生させる修道院」であるマグダレン修道院内で起こった女性たちへの迫害・虐待の事実を描いた秀作です。 ヨーロッパキリスト教の2000年の歴史の中では、かの有名な魔女裁判などを代表とする、悪名高き女性蔑視がおこなわれていたわけですが、まさにこのような形で、引き継がれていたのだと心底驚きました。1996年で、閉鎖された修道院は、当時アイルランドに10箇所もあり三万人が収容されていたそうです。 現在も、修道院側は迫害の事実をみとめておらず、被害者との和解は成立していないそうです。三万人の女性たちに起こった真実を、きちっと見つめようという趣旨で、映画俳優でもあるピーター・ミュランが映画制作を行いました。 このような施設や収容所から、脱出する映画は、かつて、「ミッドナイトエクスプレス」「ショーシャンクの空」最近では「17歳のカルテ」などが思い浮かばれますが、とにかく、その背景にある宗教的な女性蔑視が非常に胸に刺さってくるのですね。どちらにしても人権侵害の問題となるわけですが、国家や宗教によって、権力、権威を人間が持ってしまったことによる間違った行為が、人々を苦しめてきたという証しであるといえます。 マクダレンシスターズというのが現題です。マグナダのマリアがその象徴となっています。娼婦から、キリストの復活に立ち会った女性としてキリスト教にとってたいへん重要な役割を担う女性ですが、そのマグナダのマリアの名前を取って作られた更生施設の女性たちですね。実際は娼婦というよりは、性に対する尋常ではない抑圧と女性に対しての抑圧から生まれた性の無知から起こった、無実の罪の少女たちでした。 彼女達は修道院に収容され、無償で、洗濯の仕事を朝から晩までさせられ、罪を購わされたのです。娼婦はもちろん、未婚の母、また、男を誘惑するようになるかもしれないと、その性的な魅力がある女性たちも連れてこられました。 未婚の母であっても、娼婦であっても、そのような状態になるには、相手がいるからであって、その相手である男性たちには、一つも罪はないのです。「堕落した女たち」と見られ、家族からは恥さらしとして見捨てられるのです。 これはもう、映画を観ただけで、怒り心頭に達し、怒髪天をさす・・状態です。(笑) この施設は1996年まであったというのですから、世界の中で未だにある様々な誤解に満ちた因習か、まだまだ、人々を苦しめているのだと思います。本当に悲惨です。 まずは事実を知るところから始まるわけですから、映画やTVの番組は、本当に影響力がありますし、良い作品を作っていって欲しいと心から願います。 映画としてはなかなかテンポも速く、見ていて面白いです。しかし、とにかく、やりきれないです。これはキリスト教文化圏の女性たちばかりの問題ではなく、世界のシステムそのものが何か間違っていると思わざるをえないですね。そのことの真実を、一人一人が気が付いていかなければならない時代なのでしょう。 新春そうそうの問題作、ぜひ一度ごらんになってみてください! 監督 ピーター・ミュラン 出演 ノーラ=ジェーン・ヌーン

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