同姓同名
幼女殺害事件の犯人「大山正紀」と同姓同名なため迷惑をこうむった正紀はその名も「大山正紀同姓同名被害者の会」を密かに立ち上げる。集会に会したのは多士済々の8人の大山正紀。凶悪犯と同姓同名なばかりに運命を狂わされた人々のはずだったがその中には真っ赤な偽物が紛れ込んでいた。おまけに会に出席したひとりの正紀が何者かに襲撃される事件が起き、別人の大山正紀による新たな犯罪の影が見え隠れする。同姓同名による凶事の連鎖。被害者の会の面々は犯人 大山正紀の特定に動き出す。いったい、どの正紀が如何なる事件を引き起こしているのか。-----------------------ストーリーは充分面白く、でなくさもありなんな事件とSNSの誹謗中傷への冷笑的な視線は奇想狙いの物珍しさにおわらず胸に刺さる描写だった。人物錯誤、時系列の錯誤、性別錯誤、これなら錯誤トリックなんでもありだろうと身構えて読んで全員が、ニセモノで本名大山正紀ではないとかあるいは事件そのものが虚構であった(創作!?)とか諸々妄想をたくましく、いやあらゆる可能性というよおり不可能性を考察してみたが、的を射たんだか、外れたのかも判然としない、ぼんやりとした不全感が残る。誰が、いつ、どこで、何が起きたか正解せよとの問題をつきつけられてスマートな回答が出来るミステリファンがどれだけいるのか。私の知能では無理です。よくある同姓同名の主題から、これだけの複雑なハウダニットを考案し、かつ伏線回収と謎の解明はシンプルに解明できる作者の手並みには脱帽。そして最後のバッドエンドなことにがっくり、救いのなさに投げやりなある種の脱力した心地にさせられた。(_ _|||)