暗黒の彼方
新聞記者の古山は癌で余命いくばくもない先輩松島から奇妙な暗号文を託される。それは30年前の捜査二課警視藤村の不審死に関わる文書らしい。暗号に隠された過去の事件を解明しようと古山は、見えない敵の妨害にも屈せず取材に奔走し、ついにアメリカへ飛ぶ。そして古山が暴いた、警察と政財界を巡る闇取引の真相とは......--------------------暗号ミステリと思いきや、捜査小説の一種であるらしい。ただし調査を行うのが警察官ではなく新聞記者で、取材の過程が延々描かれ、暗号解読の知見はポオの「黄金虫」に少し触れている程度で興味深い推理や言及はなかった。作者としては暗号の謎解きよりも、事件の裏に絡んだ巨悪の存在を告発する人物の姿を描きたかったのだろうか。その志しは結構なのだが、長い取材調査の過程で挟まれる、登場人物のエピソードが鬱陶しく感じられ、事件を追うことに読み手としては集中できなかった。何よりも、主人公と年の差カップルの元警察官僚兼ミステリ作家との恋愛描写とか必要あるの?政治問題、経済問題、国際問題、ついでに人間関係の問題、書きたいことが様々あり過ぎて風呂敷を拡げたはいいが、風呂敷はきっちりたたまれず、ガジェットがパズルにぴったり収まりきらない、心地の悪さを感じた。SNSではベタボメの作品のようだが個人的には描き方、ストーリーの作り方、(これもハウダニットのうち)が好きになれない本を手に取った残念さが残っただけだった。