魔女裁判の弁護人
16世紀神聖ローマ帝国。少女リリと旅を続ける法学者にして元大学教授のローゼンは、アイステン領の村の魔女裁判に関わることになる。魔術による殺人のかどで告発された娘アンを審問したローゼンは彼女の無罪を信じ、リリとともに事件の捜査を開始する。果たしてアンが魔女でないことの証明は可能となるのか.......--------------------特殊設定、中世が舞台で魔女裁判がテーマと嗜好にぴったりで、読まずにはいられなかった。読み始めると、止まらないストーリーの面白さ。登場人物の設定のバランスが実によく、特定のキャラに嫌気がさすことなく気持ちよく読み進めることが出来た。アインスタインだのベナルドゥスだのエッグハルトだののネーミングが覚えのある人物のもじりなのが笑える。アンが「魔女ではない」という命題は、魔女ならぬ悪魔の証明に他ならないのだが、ローゼンの論証と対峙する領主ランドセンの反証の丁々発止が切れ味よく、禅問答を聴いているがごとく興味津々の場面だった。ミステリー要素として、まずひっかかったのはリリは何ものであるかというフーダニット。これは大体想像した通りだった。殺人犯は誰かの問題は、消去法でこの人物、と当たりをつけたところローゼンも消去法で犯人を特定していく展開に思わず膝を打ちたくなった。そして、犯人特定は当たりと見せておいて、意外な真相で探偵役の間違いの推理が露呈する結構。ここらへんのどんでん返しの仕組みはクイーン風で私好み。此方は誤導されてしまったが、作者の手法に天晴と拍手したくなった。同じ設定で自作がありそうな予想だが、期待できそう。良い予想が的中することを祈る。