魔女の原罪
医師である父のクリニックで腎臓透析を受けている高校生和泉宏哉は校内で窃盗を犯した者をかばったため、学校中の生徒からの無視されることになった。その最中、宏哉とともに透析を受けていた水瀬杏里がアンリが行方不明になり、血液を抜かれた遺体となって発見された。重要参考人として逮捕されたのは宏哉の母静香。元弁護士であり今は教師となっている佐瀬は弁護を引き受けるが........--------------------ローカル地域の新旧世代の確執、特異な環境の学校でのスクールカーストといじめ、に法的アプローチする硬派な作風と思いきやなんとタイトル通り中世の魔女の存在と犯罪者の血筋のモチーフに拘った特殊設定なお話だった。それにしても黒ミサめいた流血の儀式まで、ストーリーに登場するのは、いささか芝居がっていて無理筋を感じる。少ない登場人物で、取り集めたガジェットはそれほど目新しさはないが、うまく配置して主述の整合性がありつつも堅苦しさのない文章もテンポよく読ませるうまさだと感じる。少なすぎる登場人物で、フーダニットはどう落としどころをつけるのかとかと思ったらホワイダニットが推理の要で犯人はまんま、間違いなくその人物だったとは。そのホワイダニットが血に拘ったこととはベタすぎて悪い意味で意外性はあったけれど。いや、意外というより荒唐無稽か。ついでに言えば血を抜かれた死体のハウダニットは医学的に説明できて理には落ちるが、腑に落ちない。フィクションなのでリアリティを求めるのは無しとしても、1章と2章の繋げ方に違和感があり、視点人物が宏哉と佐瀬の二人なのも、エピソードを切り張りしたようで物語の流れにに統一感がない。そんな視点の揺らぎをを目くらましに使って真相を隠そうとしたのかもしれないが。終章が一方的な宏哉の一人語りで終わっているのはいかがなものか。佐瀬から見た事件の顛末も締めくくってほしかった。意欲作だが、意が余り過ぎて足りないところが目につき不全感が残った。