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カテゴリ:Mystery
息子の進学相談でヨークヴィル大学を訪れたフォイル警視正は、構内に落ちていた殺人計画が書かれた紙片を拾ってしまう。 犯行現場に指定されたホールの実験室に赴いたところ、乳幼児の我子を被検者に心理学実験を行っていたプリケット博士が、拳銃を紛失するという騒動に遭遇する。 気になった警視が殺人予告時間の夜八時に再び大学を訪れると、果たして生化学特任教授のコンラディン博士の頭部を撃ち抜かれた遺体が発見された。 教授はナイスドイツの手を逃れてオーストリアから亡命してきた生化学者であった。 とすると、ナチのスパイが博士に手をかけたのだろうか。 犯行に使われた銃はプリケット博士のものなのか。 月明かりの中を逃げてゆく不審者を、三人の人物が目撃していたが、彼らの証言は尽く食い違う。 社会人類学准教授ソルトによれば薄青色のイヴニングドレスに黒のコートを着た女。 プリケット博士は長身で筋肉質の男でフェルト帽をかぶっていたと言う。 警備員のウッドマンは小柄で痩せたフェルト帽をかぶった男と証言した。 三者三様の言い分に混迷を深める事態に、フォイルの友人ウィリング博士が捜査に乗り出すが 程なくしてドイツ人留学生のディートリッヒがホテルでやはり頭を銃で撃たれて死亡する第二の事件が起こる。 さらにソルトの妻エイミーまでが川で転落死する..... 事件関係者は嘘発見器にかけられることになったが 当時(1940年)の最新テクノロジーの試行は、事件の真相解明につながるのだろうか? 待望久しいウィリングシリーズ二作目の翻訳にして、シリーズの主要人物である「あの人」がはじめて登場する本作は、鳥飼否鵜の解説を付す。 ----------- マッドサイエンティストじみた実験を行う心理学教授、亡命の科学者、癌特効薬の開発、あるいは新たな金属工学上の発見、嘘発見器の試行と興味津々なガジェット揃い踏み、二転三転しながら移ろいゆく状況がサスペンスフル。 謎も盛りすぎなほどで状況整理に些か戸惑った。 「嘘は常に真相の像を映し出す」と言ウィリングの台詞がキーワード。 推論の根拠が心理学的要素に傾いているので、ロジカルに犯人を指摘する作風ではない。 ゆえに 三人の証人の誰が嘘をついているのか(誰が本当のことを言っているのか) あるいは全員が嘘をついているのか。 個人的にはここの部分の推論だけは当たって、犯人はなんとなく怪しい人物が犯人ではあったが、犯行動機や殺害方法をズバリ当てることはできなかった。 そんな具合で合格点の回答を出せなかった読者としては、謎解きの伏線回収をもう少しきっちりしてほしかった。犯行時の犯人の行動と事件の時系列の整合性が不明瞭なことに不満と不全感を感じる。 ついでに感じたことを蛇足を承知で。 結末のエピソードは、どーしてもそうなるのね、と個人的には眉を顰めたくなった。 まっ、行きがかり上当然(必然?)だしな。 その分ありきたりだけど、明智小五郎も文代さんという伴侶を事件がらみで得たし、やむをえないか。 はい、まったくの個人の主観と感性がfrauleinneinにかかる妄言をいわせております。 多謝。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.06.20 19:28:13
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