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テーマ:ミステリはお好き?(1400)
カテゴリ:Mystery
「幻視者」と称賛された画家、藤沼一成の息子である私、藤沼紀一は天才建築家中村青司の設計した『水車館』で19歳の若妻、由里絵とともに暮らしている。 12年前の事故で損なわれた顔を仮面で隠しながら。 この館で一年前、住み込み家政婦が転落死し、父の絵が紛失したうえ、友人の正木慎吾が殺害されその遺体が焼かれるという惨事が起きた。 当時、館の泊り客の一人であった僧侶の古川が失踪したため、彼による犯行と断定された。 今年も父の命日に、門外不出の傑作『幻影群像』目当てに客人が水車館を訪れた。 美術商の大石、美術史教授の森、外科医の三田村。そして招かれざる客、島田潔。 この男が到着早々、「この家を出ていけ」と書かれた脅迫状めいた便箋が居間のドアに挟まっているのを発見した。のみならず、彼は過去事件の真相を解明しようとし始める。 その矢先、新たな惨劇が起こって通いの家政婦が殺され、さらにもうひとり........ ------------------- 以下、ほぼほぼ、ネタバレ。 ↓ ↓ 奇妙な館に住む仮面の人物、幻の名画、私にとって愛してやまないガジェット揃い踏みの本編は、現在が「私」こと紀一の一人称視点、過去が三人称視点で、交互にストーリーが語られる。 ガジェットとこのストーリーテリングの技法でミステリー慣れした読者なら怪しむべき人物が誰だかわかってしまうだろう。 失踪した容疑者の謎にしても、この手の〇〇入れ替えトリックの教科書通りの用い方といったところで、それほど難解なものではない。 と、フーダニットは複雑ではなく、トリックもさほど斬新ではないのにも関わらず、状況設定の意外性と怪奇性、サスペンスの横溢するレトリックで最後まで読ませてしまう。 少なくとも私はプロットに惹き付けらるままに、現在の章と過去の章を行きつ戻りつしながら、終章の奇妙な結構に至った。 そしてその最終章の最後に論理的には解決しえない謎を突きつけて「私」の独白は終わる。 この幕引きはミステリーとしてどうであろう。 賛否両論あると思うが、はて私自身が実は何方とも回答としかねている。 まさに本作最大の謎(私個人の基準で)に、裁定なぞ下しようがないというのが正直な所感。 その謎がとは何か。 これだけはネタバレなしで、読んでお試しあれとしか言えない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019.11.01 23:28:41
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