2023/01/28(土)19:01
「知られたくなかった男」の事件の顛末 Cat out of the bag
トーマスの「妻」の一人、ミセス・トレヴェリヤンは「夫」の死と重婚の事実を警部に知らされ、失意の余り自殺を図るが、一命を取り止める。
一方チャールトン警部の部下は、怪しいと睨んだある人物の尾行に失敗する。
しかし意外な証言者が現れ、犯人は判明する。
車で逃走をはかった犯人を追う警部と私が立ち会うことになった事件の顛末は果たして。
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急展開というかなんだかドタバタ。悪いけど結婚詐欺被害者たちに同情が起きない。
と、お話の三分二近くまで来ても登場人物に肩入れできない。
325ページになってようやく、ヴィヴァソーの正体と本名らしきものがほのめかされる。
ついでに猫(キャット)のイラストに意味があったことも知らされる。
なるほど、原題はそういう謎掛けだったのか。
スローテンポ過ぎやしないか。その後まったく注目していなかった人物への警部の追求が始まり、伏線が回収されてゆく。
ヴィヴァソー以外の登場人物の正体を推理しなかったのは視点漏れだった。
これも〇〇錯誤トリックか。
そして犯人もまた視点漏れから疑惑の埒外に置いていた人物だった。
犯人の隠し方は実に巧妙でありながら、犯人指摘の手がかりはフェアに読者に与えられているとは思う。
ただし、ミステリに限らず、小説とは何を描くか以上に、どう描くかが重要。
この作品の描き方が私に波長が合わずついていきにくかった。