2024/04/19(金)13:20
ローズマリーのあまき香り
1977年、ニューヨークの高層ビル、ウォールホールセンター50階のデシマルバレエシアター。
バレエ「スカボローの祭り」に主演中の世界的プリマ、フランチェスカ・クレスパンが、何者かに殴打され致命傷を負いながら舞台を勤め上げた後、死亡する事件が起きた。
その遺体からは何故かローズマリーの香りが漂っていた。
警備員のルッジが状況証拠から犯人として逮捕されたが、生命を失ったはずの身体で踊り続けた舞姫の謎は様々な揣摩臆測を呼んだ。
そして捜査にあたった刑事ダニエルは公演の指揮者で、ユダヤ人のコーエンを事情聴取した際、ビルの設立者とフランチェスカも共にユダヤ人であったことから、ユダヤ人と日本人の不思議な共通性について聞かされたのだった。
その二十年後、スェーデンのジャーナリスト、ハインリヒとともにニューヨークを訪れた御手洗潔は、事件の謎解きに挑むのだった。
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ナチ人体実験への言及、日本人とユダヤ人論、そのうえユダヤ人による世界経済支配までいくと、なんだか陰謀論めいてくる。
そんな興味深かったり、呆れたりもする?ガジェットが盛られていたためか、六〇〇ページ余りの長大なストーリーも飽きずに読めた。
間奏曲の白鳥幻想譚のなんか、白鳥と鏡と異世界なんてコクトーのオルフェを彷彿させる世界観が
妙にfraureinneinの嗜好をくすぐるし、スカボローフェアなんてタイトルの新作バレエあったらみたいわ是非なんて、妄想も楽しめた。
妄想はさておき、ミステリーとしての出来はどうよと言えば、
結末もトリックの解明も真犯人もがっかり。
重厚長大、意味深長にさんざん思わせぶりをして引っ張った挙げ句これが正解って。
ユダヤ教の十戒に引っ掛けてか、「ノックスの十戒」を意図的に破ってやしないか?
犯人が後出しなこと
双子のトリック
秘密の通路だとかだとか。
此方は違反するな、なんて野暮をいうような石頭ではない。
規則は破られるためにあるんだから。
むしろ破戒?することで
意表をついた斬新なミステリーが創造されることを期待してんだけど。
いや、御大が島田御大が読者をかかる気分にさせる作品を書く日が来るとはある種の
想定外の「意外性」だったかもしれない。