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テーマ:ミステリはお好き?(1499)
カテゴリ:Mystery
舞台は大正時代の画壇。
無名の芸術家深江龍紅は、行方不明の類まれな美貌の義妹・時子の捜索願を警察に出した後、自宅の彫刻室で首吊り自殺を遂げた。 その深江の天才を認めていた画家井口は、来日したオランダの富豪ロデウィック氏と面会したさい、井口が描いた「サロメ」を、同じ作品を亜米利加で目にしたと盗作疑惑を指摘される。 しかも盗作のキャンバスの裏には淫らな写真まで隠されていたという。 井口の「サロメ」は女優岡島あやをモデルに制作した独創(オリジナル)に相違ない。 盗作疑惑を晴らすべく、元泥棒の蓮野、悪友の大月、姪の峯子とともに盗作者の追及をはじめた井口だったが、贋作事件に巻き込まれ、果ては戯曲「サロメ」の連続みたて殺人に遭遇することになる。 峯子が廃屋でサロメらしき美女の死体を目撃するも、死体は忽然と消えたことにはじまり 芸術家集団「白鷗会」の面々が、ヘロデ王、ヨカナアン、首切り役(ナアマン)の扮装で殺され、ヨカナアンに見立てた遺体に至っては首が切断されていた。 果たして首無し死体は誰の遺体なのか。 誰が、何のために彼らを殺したのか。 そして井口のサロメを盗作者は誰か...... -------------------- 大正時代が舞台でワイルドの戯曲「サロメ」の見立て殺人、さては日夏耿之介の訳文の蘊蓄とかあって、絢爛豪華な謎が描かれたりして、などという勝手な妄想は見事に裏切られた。 殺人事件が起きる中盤までは、贋作と盗作の犯人捜し。 煩雑に絡み合う伏線にそちらの推理は眼中になくなり、ただ物語の展開を追う。 無駄にいい男の蓮野は思わせぶりな言動ばかりで、井口と峯子、大月が調査に右往左往するのだが、彼ら探偵役が遅すぎて冗長かつ散漫なこと。 井口を視点人物に据える必要性が解らず、おまけに恋バナまで出てきて、蓮野が美貌であることをしつこく繰り返す描写、私こういうの苦手。 だから読み流してしまった箇所が多く、なのに殺人犯はこの人物、と見当がついてしまうのでは、芸がなさすぎはしないか。 すると問題は犯行動機だが、終盤の幕切れに向かって明かされるその理由がこじつけめいていて、腑に落ちない。 殺されても仕方がない輩だから、見立て殺人で殺害したり、凌遅刑の仕掛けで仕置き?!したりってどうだか。 全く共感できない。 そして動機や殺害方法への蓮野の言及にしても、説明的で言い訳めいた多弁に終止し、ロジックの整合性は感じられなかった。 誤読かもしれないが もしかしたら作者は芸術とは何か、さらに美の本質とは何かのお題目を、ミステリーを通して唱えたかったのかも、とふと考えた。 としたら、その目論見は成功してるとは言い難い。 と、妄言はこのくらいにして本のページを閉じることにしよう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.11.12 18:29:22
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