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テーマ:ミステリはお好き?(1543)
カテゴリ:Mystery
フランス革命の余波を受けて、貴族制度が崩壊しつつあるヨーロッパのとある小国の伯爵領。
三つ子が改修に当たっていた「四つ首城」で、帰還した元吟遊詩人アダロが殺害される。 アダロこそ、貴族の令嬢に子供を生ませたきり出奔した、三兄弟の父だった。 三つ子のうち何れかが、アダロを射殺する現場を複数人目撃していたが、同じ顔をした彼らの誰が殺人犯なのかを特定することは出来なかった。 領主D伯爵自らこの困難な事件を解決しようとするうちに、アダロガしたためた遺言書が発見される。 そこには、兄弟は実は四つ子で、もう一人ザミエルと名付けた男子が出生していたと記されていた。 では「実父殺し」は4人目の息子ザミエルなのだろうか。 D伯爵は様々な推理を巡らすも、その自説は老練な公貞によって論破されてしまう...... 三兄弟の友人で、D伯爵の書記官クロは、この事件の詳細と顛末を自らの回想録として残すことにした。 -------------------- 18世紀あたりの海外文学の翻訳を思わせる文体で読みやすかった。 人物造型が18世紀の舞台設定ながら、無理なく共感が出来る描写に留まっているのも好感を持った。 最初から犯人は三人の絞られていると見せかけて、全員が犯人あるいは共犯 はありきたりすぎるから無しのつもりで考察しても 次々に出てくる新たな謎に翻弄される。 さらに、「信用ならない語り手」トリックも 頭の隅に置いておくも、真相をズバリ見抜くのは難しい。 ミステリー好きなら誰もが巡らす推理を一周回ってさらなる捻りを加える多重推理の果てに、意外な真相とどんでん返しをもってくる手腕はお見事です。 完全に騙されはしないが、真相をロジカルに示すことはできない伏線を、ロジックのピースに当てはめて正解を提示してくれて、解決編で腑に落ちた..... かと思えば、この事件解明も仮説に過ぎないという妄念も頭をよぎる、余韻を残す幕引き。 新作予告が本の巻末にあったけど次作が読みたい。 てか、D伯爵の探偵役キャラが好きなので、歴史ものシリーズ化してほしいという気持ちもちょっぴり。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.11.20 11:57:05
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