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カテゴリ:Mystery
幕末横浜、万延元年から文久三年にかけての出来事。
心中相手に裏切られて亡くなった姉を持つお鏡は、粟栗寿衛郎次なる謎の男から、間者として外国人大佐バーキットの現地妻、羊毛娘(らしゃめん)となることを持ちかけられる。 木挽職人の娘伊佐もまた、謎の殺人事件の下手人の濡れ衣を着せられて死んだ父繁蔵の汚名をはらそうと、真相を探るため、羊毛娘として英国軍人メイソン大尉と暮らすようになる。 やがて起こる遊女たちの不審な死は連続殺人なのか? 二人の「らしゃめん」の運命が交錯するとき、事件の意外な真相があらわれる....... 受賞に当たり、多くの第70回選者の議論を呼んだ乱歩賞受賞作。 -------------------- 心中ものに想を得た謎の、幕末横浜が舞台、という設定に惹かれて読み始めるも、中盤からうんざりさせられる。作者の物語の構成力、文章力が拙く、ミステリーとして最重要な謎が描ききれていない。歴史的要素を連ねただけで、物語の輪郭と推理のための伏線は掴みにくい不明瞭さになっている。時代小説とはいえ虚実綯い交ぜの手際がアンバランスで、荒唐無稽な世界観に共鳴するところがなく楽しめないプロットとなっていた。歴史上の実在人物、オリジナルキャラいずれの当然登場人物への共感はない。もとい、此処でシブサワを作中に出す必要があったか。 ただ歴史小説らしさを粉飾しただけのように感じる。 二人のらしゃめんを交互に描くという記述形式からして、犯人がわかりやすく余り感心できる描き方ではない。 終盤3分の1あたりで、ようやく謎解きがはじまり、明かされる真犯人には意外性はさしてなく、何より猟奇的な事件を目論んだにしてはお粗末な動機。 もうひとつの重大な謎、〇〇と〇〇を違えた〇〇という発想も、決して斬新ではないうえ、動機がありきたりな男女の心理に終わっている。 (ポオの作品にも似たような設定の短篇があり、これは名篇で感心した憶えがある) 〇〇に見せかけた殺人、殺人と思わせる〇〇これも他作で見たパターンだが 本作では作者は、何を、どう、謎として描きたかったのか、独自性が伝わってこない。 歴史的知識を盛りだくさんにして、意欲ばかりで拙い多弁を弄したところで、作品が洗練された完成度の高さを得るものではない。 加筆修正を条件に受賞した作品だとのことだが、それでも今ひとつと感じて読了した。 --------------------- ![]() 横浜といえば、やっぱり中華饅でしょ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2025.02.16 16:57:20
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