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テーマ:ミステリはお好き?(1593)
カテゴリ:Mystery
旧家福森家で起きた、一族惨殺事件。
大人4人が殺され、子供たちは辛くも難を逃れたが、家族の一人八重子は謎の失踪を遂げた。 犠牲者の遺体は人間ならざる怪力で破壊され、現場にはなんらかの儀式を行ったらしき痕跡が残されていた。 福森の姻族である祖母の富士子に請われて、事件調査に当たったユーチューバー中村亮太は、共に調査にあたった霊能力者加茂禮子から、恐るべき指摘を受ける。 福森邸内は能面、幽霊画、刀剣、その他諸々の呪物だらけで、それらに籠った何百年にもわたる怨念が今回の事件の根源であると。 それら呪物を操り、一族へ祟る黒幕の存在を追う彼らの前に、更なる脅威が次々と立ちはだかる。 やがて行方知れずになっていた八重子も遺体で発見され、福森一族の葬儀が呪いの渦巻く屋敷内で 行われることになった。 無事に葬儀を済ませることができるのだろうか。 果たして呪いの五芒星形「さかさ星」に執着を示す異国の怪僧が介入してきて、葬儀前夜、事件は大詰を迎える。 ---------------------------- ホラーミステリーの形式を借りて表された貴志祐介版「黒魔術の手帖」ならぬ「呪物の手帳」といった体で、古今の呪物に関する知識が百出。 呪物によって引き起こされた怪現象を解明し、事件解決するの霊能力なのだから、ロジックはどうでもよろしい。トリックも呪力が行ったのだからどんなトンデモトリックもあり。 な、内容のはずだが、それなりに腑に落ちて読み進められるは作者の優れた筆力と、簡明かつ適切な文章力のなせるわざだろう。 呪物に関する作者の博覧強記なことにも感心し、かつて「黒魔術の手帖」を読みふけった時の熱意をもって貴志の呪物ワールドに引き込まれた。 その一方で、ロジックやハウダニットは考察の対象外に置くとして、「犯人」は すぐに判ってしまったのが残念。 消去法でいくとその人物しかないもので。 ついでに苦言を述べれば、いくらなんでも大部に渡る呪物の蘊蓄の披歴だけではこの手のガジェットに関心のない読者の興味をつなぎ留めるの難しかろうと。 エンタメとしてはもっと専門的知識の部分は整理して刈り込んだほうが良かった。 さすがに私も終盤に至っても呪物良し悪しの白黒はついても、事件解決に明確なめどがたたない展開には息切れがして、ついて行きかねた。 そして、謎は謎のままリドルストーリーで幕が下りるのは、ホラーミステリーに相応しいのだろうが 次作へ続くのだとしたら、また600ページおつきあいするのでは次回のお楽しみならぬお苦しみ といったところだ。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2025.05.17 15:43:51
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