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テーマ:ミステリはお好き?(1645)
カテゴリ:Mystery
88歳の作者、三度目のエドガー賞最優秀長篇賞受賞作。
南北戦争下、南軍の敗色濃いルイジアナ。 従軍時のトラウマを抱えて、伯父ラスキンの農園に身を寄せていた外科医ウェイドは殺人事件に巻き込まれる。近隣の農園主スアレスがブードゥーの儀式を思わせる惨死体で発見され、主人から性的虐待を受けていた奴隷のハンナが、殺人の容疑者となった。 ウエイドの助けを借りて、奴隷解放論者のフローレンスとともに、逃避行を続けながらもハンナは生き別れになった息子との再会を希求する。 一方、事件の真相を追う警察官ピエール・コーションは捜査の途上出会った解放奴隷ダーラに惹かれていく。 彼らの行く手にゲリラ部隊の指導者ベイズや北軍の将校が介入し、混沌とした運命が交錯する果てに、物語のたどり着いたところは....... -------------------- 「風と共に去りぬ」を夢中になって読んだ、かつての記憶に期待して手に取った。 ミステリー要素は希薄だが、戦争や人種差別の悲惨と愚行を描いた歴史小説として読めば貴重な一篇だろう。日本ならばミステリの何とか賞でなく、直木賞あたり受賞しそうなクオリティか。 とは言え、登場人物各人の視点で進行する、ストーリーは殺人事件がらみのサスペンスも加わって 緊迫感はあるが、煩雑さを感じて読みやすくはなかった。 殺人の謎解きも、事件の動機や背景が掘り下げ不足に終わっっていると感じた。 登場人物各人の「告白」に終わらせず、三人称他視点で歴史を俯瞰する客観的記述がどこかにあったほうが、より深く描写出来たのではないか。 と、ミステリとしてのジャンルを離れてもレトリックに不満が残る。 などと思いつつ終章に至るとここで一転、文脈はゴーギャンのエピソードに変わり、虚実ない混ざった余韻のある語り口に変わる。 そうリンクさせるとは、印象深くて良い幕切れだ。 作者の別作品も読みたくなった。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2025.09.04 19:13:14
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