日本扇の謎
舞鶴で保護された記憶喪失の青年は、一本の扇を所持していた。後日彼の身元が判明。彼の名は武光颯一。今は亡き日本画家武光宝泉の息子であり、扇は父の創作による遺品だった。颯一は記憶が蘇らぬまま、京都の生家へ帰還するが、そこ「玄武館」で画商森沢雪絵が密室で殺害される事件が起こり、彼もまた失踪してしまう。奇しくも「日本扇の謎」のタイトルで新作ミステリーを構想中の有栖川有栖は、火村英夫とともに事件解決のためにフィールドワークに臨む。果たして颯一は殺人犯なのだろうか。そして彼は失った記憶を取り戻したのであろうか?警察も難航する捜査の中、火村と有栖は、とある人物から玄武館のある秘密を知らされる。その秘密こそ、事件の謎を解き明かす重大な鍵であった..........---------------------エラリークイーンのオマージュ「ニッポン樫鳥の謎」のタイトル談義で始まる出だしは好調。作中作「日本扇の謎」が読めるのかと期待するが、全く別の事件が起こる展開もよい意味で予想を裏切られて興味深かった。しかし、事件が起こってからの火村たちのフィールドワークの過程の描写がもたついて飽きてきた。有栖の披露するトンデモ推理や、警察のオマヌケ捜査は間違いにきまっているので、その手はくわないと斜め読みになってしまった。そんな具合で推理に役立つようなヒントが見つけられず探偵役火村はどう推理するのかを推理する というクイーン的課題は私には解けなかった。こっちの頭が悪いだけかもしらんけど。ある「秘密」の暴露から謎の判明に突入する章で、いくたか興味が持ち直した。しかし火村が思わせぶりな態度をとるばかりの謎解きに再びうんざりさせられる。もっと端的に事件と謎を語ったほうが、推理のロジックが鮮明に伝わると思うのだが。解かれた密室殺人トリックもよくある 自分で〇〇を作った で、これは物語の途中でネタバラシしているので、今更な白々しさである。てか、もうこのネタ飽きた。犯人像は意外に感じなくもないが、動機が短絡的でつまらない。犯行手段も稚拙で、犯人の人物像の描きこみも不足。何をどうを描きたくて、本作がこんな仕上がりになったのか、このミステリのどこが良いのか私にはまったくわからないまま読み終えた。と、文句ばかり黒猫の手帳に書いておこう。