そしてまた 医師も去る
昨日の仕事帰り、かかりつけの〇〇外科胃腸科医院の前を通りすがったら灯りの消えた閉ざされたエントランスのドアに貼り紙が掲示されていて★「 院長S.Uは1月16日、享年90歳で永眠いたしました」と、青天の霹靂のごとき告知がーーーーーー私は親子二代でこの医院にお世話になってきたが、院長も前院長を継いで二代目で、アメリカ留学までして学位を取得しながら、市井の医師として、地域医療に貢献してきたドクターだった。欧米人や、東南アジア系の人が医院を訪れ、院長が英語対応しているのを何回か目にした記憶が、昨日のことのよう。見立てが適切で、症状にあった総合病院や専門病院へ責任を持って紹介してくれる、困ったときに頼れる先生だった。予兆がなかったわけではない。高齢なのに1人で医院を運営して働き過ぎだったのだろう。去年の5月院長は急病で倒れて不在のため、代診医の診察になり、風邪ではなく肺炎だった私は、診断がつくまでかなり手間取ってしまつた。 その何ヶ月か後、医院は午前中のみ診療になり、復帰したと思っていた矢先の、あまりにもあっけない急逝だった。 貼り紙には閉院はせず、息子さんらしい医師が、東京◯◯◯医科大学系の医師と連携して診療を行っていく予定と記載されていた。こうして信頼していた医師が医療現場を去り、消えていく。人は生まれてきたからには死なねばならない誰よりもそれが解っているはずの医師は、どのように自らの死を迎えるのだろう。彼らもまた、日々の泡に流れ去り消えてゆく生命に過ぎない。なんて考えると医師と患者の関係をドライに割り切っているつもりの私でも心が痛い。そして医師が去ったあと、残された患者は何処へ行く。