ロボザムライ( 飛鳥京香・ 山田企画事務所)

2014/07/04(金)00:22

ロボサムライ駆ける■第53回

ロボサムライ駆ける2014版(78)

ロボサムライ駆ける■第53回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ ■第七章 血闘場(2) 「この古代の神殿祭壇の上が勝負どころぞ」  主水は叫んでいた。 「舞台にとって不足なしですね。わたしはこのゲルマンの剣で戦います。我が神に祝福あれ」  ロセンデールの顔も晴れ舞台での戦いであり、上気している。 青い目がキラリと光る。  大空洞の外から、急に稲光がひらめく。ガーンという言葉が後から響いて来た。 「主水君、貴公をこの刀のさびにしてくれましょう。それはとても名誉なことですよ」  ロセンデールは誇りを旨に、戦いに望んでいる。  電磁サーベル、ゲルマンの剣を抜き放つ。  再び、稲光がひらめく。光が回りに満ちた。 剣からは、またクサナギの剣とはことなる威力がある。 「この戦い、望むところ。クサナギの剣の力、お見せする」  主水も、剣を抜く。ぴしーん霊気が放たれた。 「だ、旦那は大丈夫ですかね、ねえさん」  鉄は、びびって隣にいるマリアに尋ねる。マリアは普通に戻っていた。 「私にだってわかるものですか」  ロセンデールはマリアの方を見てにこりとする。 「主水君、君が倒れれば、レイモンもマリアも刀のさびにしてあげましょう。心して打ちかかっていらっしゃい。私は、我が聖騎士団の者ほど、腕は甘くはありませんよ」  サーベルがビュウと唸った。  ロセンデールは、ヨーロッパの剣技大会でもトップレベルの腕だといわれている。  サーベルは突きが基本といわれているが、ロセンデールの技は単調ではない。なぎ、払うもテクニック中に含まれている。  おまけに手にするは、ゲルマンの剣。 古来より伝わる名剣。 神聖ゲルマン帝国の守り神である。  戦いは思わぬ方向に進んでいる。主水は防御の構えに入っている。ロセンデールが攻勢なのだ。  レイモンにしても、マリアにしても気が気ではない。 「えーい、主水ったら、肝心なときに剣技がさえないのですから、だらしがないですわねえ、どうしたのですか」  味方のマリアがいらだち、罵声が飛んでいた。 「うるさい、マリア。サーベルに対しては、お前ほどではないんだ」  そういった主水の頭がグラリと揺れる。 視覚装置がおかしくなった。 体のバランスが取れない。 「ウ、いかん…」  どうしたことか、主水の持病が肝心なときに出てしまった。 「いかん、この大切な時に」  足毛布博士が額に手をあてる。 主水の様子に足毛布博士が気付く。 「主水の様子いかがいたしました」  徳川公廣が尋ねる。 「例の病気がでよった」 「えっ、こんなときに……」  徳川公が唸る。  主水に、意識の空白が襲ってくる。 「どうした、どうした、主水君」  ロセンデールがニヤリと笑っている。 「私の腕に恐れを感じたのかね」  主水はふらふらし、ゆっくりと右腕が止まってしまう。  意識がフェイドアウト。  その姿のままで、主水はぎこちなくバッタリと神殿の床に倒れた。 が、クサナギの剣は、手に握られたままである。 「ほほっ、口ほどにもない人ですね。主水君」 「主水、危ないわ」  後ろからマリアがすくっと立って、自分の愛刀サーベル「ジャンヌ」を手にしていた。 「いい、ロセンデール卿。ヨーロッパの恨みをこの日本で晴らします」  マリアの顔はキッと厳しくなっている。 「おやおや、麗人マリア君。美しい愛の世界の姿ですねえ。が、所詮君は女ロボットです。現在のヨーロッパチャンピオンの私を倒せるとお思いですか。ふふっ、おまけにこれは、ゲルマンの剣ですよ」 「それは勝負してみてからいってほしいですわね」  ロセンデールはあることに気付く。 「そうだ、マリア君、私の目をよく見てごらんなさい」  ロセンデールが声高かに叫んでいた。悪魔の表情である。 「いかん、マリア。ロセンデールの目を見るな」  主水はロセンデールの狙いに気付く。 ころがり、のたうつ主水は、マリアに叫んでいるつもりだ。 が、いかんせん、その声は今マリアには届いていない。 「まずいのう。マリアの別の人格が浮上するかもしれん」  徳川公がポツリとつぶやいた。  マリアは別人になりつつあるのだ。 観戦している人々からどよめきが起こる。 「別の人格ですと」  今度は足毛布が尋ねる。 「そうなのです。マリア=リキュール=リヒテンシュタインは二つの心を持つロボットなのです。もう一つの心はリキュール。マリアの肉体にあるもう一人の人格」  徳川公はボソボソとしゃべる。 「こんな時に…」  ロセンデールの剣が、あっという間にジャンヌの剣をたたきわり、続いてマリアの胸を貫く。 「うっ」  と叫ぶ。 「マ・リ・ア」  主水も叫んでいる。  ロセンデールは、ゲルマンの剣を、瞬間抜き取る。  どっと祭壇上に倒れるマリア。剣はマリアの中枢をついていた。 「ふふん、マリア君も口ほどにもありませんねえ。手応えがありませんねえ。折角の、こんな晴れ舞台なのにねえ」  ロセンデールはゲルマンの剣をビュウと振った。 (続く) ■ロボサムライ駆ける■第七章 血闘場(2) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/

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