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カテゴリ:東京地下道1949
東京地下道1949■第13回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画 ムサシは誰も信じない男だ。 彼の人に対する信頼感は、戦争時の体験によって完全に破壊されていた。 彼の学校の教師は、厳しく、愛国主義を教え軍事教育を旋してきた。 また、さらに、人格者であるという評判もあった。 ロシア軍の戦車T34を前にして、彼は生徒達をほおりだし、自分だけ助かろうと逃げたのだ。 ムサシの学友は皆殺しにされた。 ムサシは執念深く、その教師の男を、ソ連侵攻軍前線からの逃亡者の群れから捜し求め、みつけ殺した。ムサシに、彼は土下座し謝ったが、許さなかった。 ムサシのアジトの二階に恵がしばられ、ころがされていた。 ムサシのアジトはトウキョウの旧区役所でピルの廃墟である。 「心配するな、恵、お前には手を出さない。鉄を殺ったら、すぐ帰してやる」 「鉄が、あんたなんかに、殺されるもんですか」 ムサシは、ふっと笑う。 「ふ、恵、それはどうかな。とにかく奴を殺らなきやならないからな。掟があるんだ」 「掟ですって?」 「いいか、恵。奴のおかげて、何人もいた俺の仲間が全滅したんだぞ。奴が食糧トラック襲撃の一件をぱらしたんだからな」 「しかたがないわ。保安部につかまったんですもの」 「ほう、やはりな」 恵は、ムサシの誘導質問にひっかかった。 「鉄が、襲撃の件をばらしたことに間違いはないようだな。 仲間をうらぎらないというのが俺たちの掟だ。しかしなぜ、お前がそれを知っているんだ」 「私が、鉄を助けたのよ」 「何、お前が。恵、ふーん。お前は気の強い女っ子だな」 「お願い。鉄を殺さないで」 「今度は、、お願いか。、、だめだな。掟だからな。鉄も、充分それを承知しているはずだ」 「でも」 「うるさい。鉄のおかげで、皆、仲間が死んじまったんだ。お前の兄貴もだ」 「えっ、お兄さんも」 恵の顔色が変る。 「そうだ、それでも、、まだ、、鉄をかぱうのか」 答えはなかった。恵は青い顔になる。 鉄は、ムサシのアジトの、かなり手前で車を留める。 「どうした、鉄」 「悪いが、竜。ここで待ってくれ」 「どういう事だ、鉄」 「これは、ムサシと俺の問題だ。お前は関係ない」 「関係ないだと、恵ぱ俺の妹なんだぞ。どういう口を聞く。 鉄、いいかげんにしろ」 竜は、鉄をつかもうとした。 一瞬、早く鉄は体をかわし、竜に足けりをいれた。 みぞおちにきまる。竜は気を失った。 「竜、すまない。すべては俺が、保安部に食糧車襲撃の一件をばらしちまったことから、おこった事だ。恵は、、必らず俺がとりもどす。ゆるしてくれ」 竜を車にのこし、鉄はくずれかけた屋敷の前で立ちどまる。 鉄は、はるかにかすむトウキョウ城をながめた。 トウキョウ城は、戦災を受けずトウキョウ市の真中にそびえたっている。 しかし、日本の象徴であったトウキョウ城は、ソ連軍の占領地区にあるのだ。 トウキョウ城をみながら、目測し、磁石をとりだし、方向を確かめる。 例の地図と現在のトウキョウ市の地図を見ぐらべる。 「どうやら、ここらしいな」 竜は独りごち、江戸時代の旧大名屋敷の庭へ忍びこむ。 トウキョウ市攻防戦の際、かなりの被害を受けたらしく、荒れはてて人影はない。 庭園の池をさがす。池も見るかげもなく、干上がり、形が辛うじてわかるくらいだ。 (続く)続く090901改訂 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 1, 2011 12:48:05 PM
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