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カテゴリ:フアンタジー小説「イシのヒト」
イシのヒト■第10回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com 第10回 ■ 第3章 光二 ベースマンの殺戮機械からの光線兵器がまわりの子供たちの体を貫く。体が焼き焦げる匂いがした。生存ステーション・ゼータ。12年前だ。 「いたいよ」 「助けて」 悲鳴と泣き声、叫び声がステーションに満ちていた。 「光二、大丈夫」 「有沙ねえちゃん、逃げて、僕はもうだめだ」 「何をいってるの、光二、しっかりしなさい。マザー、マザーはどこなの」 「ここだよ」 われた声が聞こえてきた。声帯が壊れたらしい。子供たちが倒れている。み な、光二、有佐と一緒に育ったファミリーだった。 アリスA203は体の半分を吹き飛ばされていた。焼き焦げた機材の下敷きになっていた。 「光二、有沙、ふたりでおにげ。お前たちだけだよ、生き残ったのは。私はもう動けない。ここは私がなんとか、時間をかせぐ」 「だって、マザー、一緒に逃げよう」 光二が泣き声で言う。 「有佐、はやく、光二を連れて逃げるのよ。光二、有佐のいう事を聞くんだよ。子供たち、私が育てた子供たちで、今まで生き残ってきたのはお前たちだけだ。生き残っておくれ、私アリスA203のためにも。そして、いつか私のことを思い起こしておくれ。さあ、そのためにも逃げて生き延びるのよ」 二人は泣く泣く、アリスをおいてそのばを離れた。 「光二、後ろをみちゃあだめ」 「どうして、おねえちゃん」 爆発音が聞こえてきた。が、いかんせん、ふたりは子供だ。 高速で移動する殺戮機械が近寄ってくる。 「光二、早く」 殺戮光線がまわりをないだ。光二は倒れる。 「光二」 有佐が叫ぶ。光二は、恐怖で体を動かすことができないのだ。 有佐は自分の体を 光二の体の上に投げ出していた。 殺戮機械が光二たちに気がつく。 光線がこちらをむく。 やられる、光二はそう思った。 目を思わずつぶった。が殺戮機械の方が吹き飛んでいた。 光二はゆっくり目をあける。 「おねえちゃん、いったい」 光二は有佐の指にあるものをみた。それがふたりの命を救っ たのだ。 「おねえちゃん、それは」 「私にもわからない、知らないうちにあったの」 有沙は子供の頃から、この指輪を大切にしていた。 幼い頃は指が細かったので首から下げていた。大きくなって、光二が指にさしてやった。 二人は血のつながりはない。光二は有沙の指にはめながら、キスをした。ふたりはかんきわまっていた。血の契りであつた。 「光二、私達がゼータ生存ステーションで生き残ったように、二人はいつも一緒だよ」 「わかっているよ。姉さん、俺達はいつも一緒なんだ」 あの時、光二は有沙の死体から指輪を抜き取っていた。騒ぎのあと、すぐ、平和チームがやってきた。光二は参考人として、拘留された。この部隊員が有沙の死体にさわろうとする。光二は叫んでいた。 「おねえの死体にさわるんじゃあねえ」 平和チーム隊員はこの星の人間ではない。だから、極めて事務的に処理する。バーナーで、彼女の死体を焼き切っていた。姉、有沙の死体が燃え上がる前で、光二は泣き叫んでいた。 「おねえー、アリサー」 (続く) SF小説■イシのヒト■(1989年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 2, 2007 02:04:01 AM
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