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カテゴリ:フアンタジー小説「イシのヒト」
イシのヒト■第12回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com 第12回 ■ 第3章 光二 「だれだ、おまえは」ローレルが男にきずき、声をあげる。 「光二の味方か」 「Vグループのキッズじゃないな」 「それに平和チームの者でもないな」 「なんだ、こいつの格好は」 「仮装行列かい」 「ここは舞台じゃないんだ。関係のない奴はひっこんでろ」 これだけ、ローレルとハーマンがいっても男は無言だ 男は光二の様子を探って入る。 「ちっ、気持ちのは悪い奴だぜ。おい、速く。アジトまでかえろうぜ」 「そうだな、Bグループの邪魔がはいらないうちに」 二人は気を失っている光二をホースの後ろに乗せて飛び上がろうとしていた。 その時、静かにしていたその男が、目にもとまらむ早さで、Vグループのローレルとハ ーマンの間に割り込んで、ホースの操縦管を持つ二人の手を、男は両手でおさえていた。 「何、何をしやがるんだ。てめえ」 「やはり、Bグループのキッズか、おまえは」男は何もいわない。 「そうかい、それじゃ、御相手しなきゃな」 「悪いことはいわない。私の相手になるな。私はその光二に用があるんだ」 男が初めて声をだした。男の顔は、過去が尋常ではなかった 事をあらわしている。 「光二に用があるだと」 二人は顔をみあわす。 「ふふっ、残念ながら、我々もこの光二に用 がある。俺達が先客だ。ものには順番がある。おっさん、そのくらいの事はわかっている だろうが」 「順番だよ、次には光二を渡してやるさ」 「ああ、もし生きてういればの話しだがな」二人は笑う 「私はそんなに待つ訳にはいかん」 男の目は遠くを見るような眼だった。 ローレルはこの男のマリーンブルーの眼を見て、ぞっとした。 「おまえはドームへの来訪者だな」 「俺たちはこのドームでは少しは知られた名前なんだ、Vグループといってな」 「我々にさからおうというのは、ここの法律を破っているのと同じさ」 「残念ながら、私にも法律がある。そのわたしの法律にしたがって光二をもらっていく」 「どうやら、このお客人は俺たちに、喧嘩をうっているようだぜ。どうするハーマン」 「それならば、歓待しないってほうはないな、ローレル」 「あとで泣いてもだめだぜ」二人は男にとびかかっていく。 数秒後、二人の方が大地にころがっていた。 「光二、起きろ」光二の意識が戻ってきた。 「うん、いったい、あんたは」 が光二はこの男の顔を見て驚いた。 光二の夢に出てくる男だったのだ。光二は倒れている二人をみる。 「どうやら、俺を助けてくれたらしいな。礼を言う」 光二は大地にころがっているVグループをける。 男は言った。 「私がだれだかしらなくてもいい。それより、光二、聖砲をわたしてくれ。 私にとって重要なものなのだ」 「聖砲だと」やはり、夢と同じ事をいいやがる。 「そうだ。私は聖砲を持っている男を探して、いろんな世界を渡ってきたのだ。君がどの 世界にいるのかわからなかったのでな」 光二は一瞬、時間が泊まっているような気がした。 今、この男のいったことは何なのだ。まったく意味がわからない。 今度は光二が質問をする番だ。 「一度あんたに現実に会えたら、きこうと思っていたんだ。あんたは最近俺の夢に頻繁に でてくる。あんたは、夢の中でも聖砲をさがしている。それはわかった。が俺は聖砲なぞ もっちゃいないぞ」 男はにやっと笑う。 「君は知らないだけさ。君の指にある」 「指だって」 おもわず光二は左手で、右の指輪を押さえていた。 「まさかこの指輪が聖砲というのではないだろうな」 「それだ」 男は冷淡に言う。 「あんた、いったい、誰なんだ。それにいったい、聖砲って」 「光二、君はこの事件にかかわるべきではない。これは我々の世界の事件なのだ」 「そういう一方的な言い方はないだろう」 「君は聞いても、理解できないだろう」 「あんたが聖砲という、この指輪は、姉のかたみなんだ。みずしらずのあんたに渡すわけ にはいかん。あんたは何者なんだ」 「石の壁の祭司だ」 「いしのかべ、さいし。どういう意味だ」 「だから行っただろう。この事件は君の想像力をはるかにこえている」 「お前さんねえ 」光二は少し考えている。 「私の名前はアルクだ」 「アルク、事情をはなしちゃくれないか。それもできるだけわかりやすく。あんたは俺の 命の恩人というわけだ。お礼をしなきゃいけない。俺は人に借りをつくるのがきらいなん だ」 「このフォトを見てくれ」 アルクは写真を差し出す。 「こりゃ、なんだ、えらく古ぼけた写真だなあ」 が光二はこのフォトを見た瞬間、大声をあげていた。 「姉さん、これは有沙の写真だ」 アルクもびっくりし、反論する。 「違う、私の娘ミニヨンだ」 「あんたが間違えているぜ、これは姉さんだ」 光二はアルクのさしだしたフォトを握り 締めている。手がふるえていた。いったい、なぜ、この男は有沙の写真を持っているんだ。 そういえば光二は有沙の写真は一枚も持ってはいない。 「とにかく、光二よ、私の話を聞いてくれ。私の娘ミニヨンが石の男に心を奪われたのだ」 「というと」 「石の男の心底に、ミニヨンが取り入れられてしまったのだ」 「心底にとらわれる」 「人間が心の中にとらわれるって。それに『いしのおとこ』とはなになんだ」 「石の男とは我々の信仰の対象なのだ。この男が、我々の世界を作っていると考えられて いる」 「それじゃ、ミニヨンが中にいるのは名誉な事ではないのか」 「それと、ミニヨンの件とは異なる。彼女は一人の女の子だ。その子が創造者の心に入る とは、不浄な事なのだ」 「俺たちの世界の価値観とは異なるようだな」 「そうだ。君は理解できまいが、とにかく、 彼女を助けるためには、君のもっている聖砲が必要なんだ」 ここでいろいろ言ってもしょうがない。とにかくミニヨンとやらにあってみる事だ。 有沙である可能性もなきにしもあらずだ。光二はある決心をした。 「OK、あんたの言うことはわかった」 「おお、わかってくれたか」 「この指輪はあげてもよい。がそのかわり」 「そのかわり」男は身構えた。 「あんたのいう別の世界に連れて行ってくれ」 「それはだめだ」男は不安になる。この若者は何を考えているのだ。 「つまり、あんたのいうミニヨンに会いたいのだ」 「私の娘ミニヨンに」 どういうことだ。ミニヨンに会いたいだと。 「そうだ。俺は自分の姉だと考えている。あって納得したいのだ」 「たしかに、そのほうが納得できるだろう。ただし、石の男に勝ったらの話しだが。つま り、石の男と戦わねば、ミニヨンにはあえんぞ」 よし、うまくいっている。とにかく聖砲が必要なのだ。アルクは思う。 「戦いだと、のぞむところだ」 光二の血が騒いだ。別の世界で戦えるだと。 「光二、私の体につかまれ」 この若者の気がかわらないうちにとアルクは思った。我々の 世界に連れていってしまえば。どうせ、聖砲さえあれば、何とかなるだろう。 「あんたの世界に連れて言ってくれるのか」 「そうだ。君もそうすれば、納得するだろう」 「それはあんたも同じだろうよ、アルク」 そうだ、俺は納得したいのだ。光二は思った。 (続く) SF小説■イシのヒト■(1989年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 2, 2007 05:15:55 PM
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