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ミュータントウオーズ・新人類戦記-飛鳥京香作品

ミュータントウオーズ・新人類戦記-飛鳥京香作品

ミュータント・ウオーズ第7回

ミュータント・ウオーズ(超人類戦記)第7回
(1978年作品)
第一章 激 怒
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/
(■30年前の小説ですので、設定がその時代です。)

 背後の人の気配に、竜はふりむいたが、すこ
し遅そかった。
 「ジウが、そうだったのか」
 戸口にハイニンが立っていた。順には奇
妙な形のヘルメットをつけている。手にはト
カレフ拳銃がにぎられていた。
「ハイ・ニン、あんた」
「悪いな。竜、今、俺はKGB(ソビエト国家保
安委員会)のエージエントなんだよ。食うためにな」
「なぜだ。もと解放戦線(南ベトナム解放民族戦線)の勇士のあんたが」
 竜の顔には、しかし変化がない。
 「理想さ。理想のために俺はアメリカ軍と戦い、ベトナム解放をなしとげた。しかし、その

あとに来たものといえば。そう幻滅にしかすぎないのだ。
竜、俺の失望が、どんなものだったかわかるか」
「、、、」
「恐らく、お前には理解できんだろう」
 忍従の表情のハイ・ニンの顔がある。
 
「それで、あんたは、あんたの勇気と名誉を
金で売ったわけか」
 
「そうだ。俺は、このジウを、ソビエト人の手に渡せ
ば、莫大な金を手にすることができる」
「すでに、KGBはこの事を知っていたのか。
アメリカの秘策兵器がベトナムに残っていたという事を」
「そうだ。お前が来ることもわかっていた。
そのために、お前をよく知っている俺がここに
派遣されてきたのだ」
「それじゃ、カンボジア兵から助けてくれた
のは、仕事のためか」
「そうだ。が、コンソン島(一八六二年、 フラ
ンスが建設した監獄島)の借りをかえすこと
もあった」
「コンソン島か。思いおこすな」
「いや、もうその話はいい」
「そのヘルメットは、KGBが用意したものだ
な」
「KGBが開発したものだ。彼らのミュータント心理戦に
関する研究から生まれたものだ。このヘルメ
ットをつけていれぱ、ジウたちミュータントの精神エネルギー
から遮断される」       ゛
「さすがにKGBだけの事はあるな。ソ連も
超能力者を戦力として使用しているからな」
 ハイニンは、時計をながめた。しかし、その動作にすき
はない。
 「よし、そろそろ、外へ出てもらかうか。おむ
かえがそろそろぐることだ。その前に彼女を
処理しけれぱならんな」
  ハイ・ニンは、二人の会話を黙って聞いてい
たジウの腕をつかみ、注射を行なった。彼女
は気を失なった。
 彼らは村を出る。気を失次ったままのジウ
の腕をつかみ、再び注射をした。
(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/


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