■宇宙から還りし王 第13回■宇宙から還りし王(山稜王改題)第13回[ 宇宙(そら)から還りし王(山稜王改題) ] ■宇宙から還りし王(山稜王改題)第13回 (1978年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ 空間に男が浮んでいる。眼はとじられ、身動きしない。心微音も 聞こえてこない。肌は血はかよっていなくまるで石の肌だ。 見知らぬ者が見れば、そいつは空間に浮んでいるキリスト像に見える。男 の体は光っていて、光球の中にいる様だ。その石像から心の声が聞 こえる。 『ようやく、米たか、アゴルフォス』 「あ、あなたは神なのか」 『神ではない。がこの地球ではもっとも神に近い存在だろう』 「あなたは死んでいるようにも見えるが」 『死んでいる。生きている。そんな地球的尺度からは、私は超越し ている』 「石像の様に見える」 アゴルフォスはうめいていた。心なしか体がふるえている。 『いいか、君の見ている私の体は、固いコアに包まれているのだ。 いわば羽化直前のさなぎと考えてくれ。それゆえ私の意志の力では なく肉体的な君の力が必要なのだ』 「わかった。ネイサン、あなたに従おう」 リハビリーテーションセンターから本部への連絡がとだえ、2時 間たつ。ラガナ砂漠の上をジェットヘリが飛んでいる。 「本部、どうぞ、こちら探索ヘリです」 「リハビリテーションセンターは見えたか」 「いえ、それが今だに発見できません」 「何だと、座標をチェ。クしろ」 「それが何度、チェックしてもその位置には建物が存在しないので す」 ヘリの飛び廻っている場所は他と変らぬ砂漠だ。そこには建物の 残骸も残ってはいない。 (続く) ■宇宙から還りし王(山稜王改題) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ |