■宇宙から還りし王 第22回■宇宙から還りし王(山稜王改題)第22回 (1978年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ ケインのまどろみはやがて先刻のシアリー絶壁とつながる。 アゴルフォスは先程と同じ様に、彼を黄泉の船に乗せる。 やがてその船は山上宮殿に辿りつく。そこはいかなる想像力もお よばない建物であった。地球上の過去の王が作りあげた宮殿とも異 なっていた。ドーム型をしていて、中心から巨大な木がはえ出て、 ドームの上をすばらしい枝ぶりで被っているのだ。ドームの表面は さながら宝石の様にみえた。がそれは刻々、光ぐあい、色彩、紋様 が動いていく。そしてあきらかにそのドームの表面は生き物の様に 波うっていた。あるいは心臓の音さえ聞えてきそうなのだ。 アゴルフォスは回廊を通り、山陵王の前につれだしていた。山陵 王は奇妙な椅子にすわっていた。その椅子もまた息づかいが感じら れるのだ。 ネイサンはデータの通りの顔だった。 「君は、何をしにきたのだ」ネイサンが尋ねる。 「私は、先刻、言いましたように山陵王に原稿をいただきに来たの です」 「笑わすなよ、お前の顔には宇宙省のエージェントと書いてあるぞ」 アゴルフォスが言う。 ケインは脇に装着していたメーザーガンを発射しようとする。が メーザーガンは作動しない。 「どうしたね、私を殺すつもりだろう、リーファー君」山陵王が言 リーファーだと。俺はケインだ。ケインは夢の中で叫んでいる。 そしてこの知覚が現実のものではないと知る。ケインは今、 アーなのだ。 「なぜ、私の名前を知っている、ネイサン」 「私はネイサンではない。私は山陵王なのだ」 山陵王が眼をのぞきこむ。 一瞬、ケインはシアリー絶壁からころげ落ちる自分の首を感じた。 それはりリファーの首であり、またケイン自身の首でもあった。 「うわっ」ケインは夢を見ながら叫んでいる。 ケインは過去の自分の回想に今や、とらわれていた。 (続く) ■宇宙から還りし王(山稜王改題) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ |