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SF小説「アイランド」山田企画事務所

SF小説「アイランド」山田企画事務所

■アイランド■第2回


■アイランド■第2回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/

 「コロラド、俺だ、射つな」
なじみのある声が叫んでいた。
 「ボーン、お前だとはわかっていた。警告しておいたろう。何人も
この島に近づく事は許さないとな」
 コロラドはスピーカーを通して叫んだ。彼らの行動はすべておみ
とおしなのだ。なぜなら、この島の防禦システムには1ケ国の国家
予算をつぎこんでいた。上空五千mには監視衛星まで飛ばしている。

 「コロラド、お前に役に立つ情報を持って来てやったんだ」
聞きなじんだボーンの声が遠くから聞こえていた。
「静かにしろ、ボーン。お前も知っているだろう。俺が他人にこの
島へ入ってこられることを強度にいやがっている事を」
 「いいか、コロラド。お前の島と言っているが、この島はもう地図
上は存在しない」

 「何だと、という事は、俺の島は」
 「そう、もう地球上にはないって事だ」
 「どういう事だ、ボーン」
「いいか、思い出してみろ、コロラド、二、三日前、島に星が落ち
てこなかったか」
「そういえば、二日前」

 この島、サンチェス島はコロラドの島だ。いや今のホーンの話では
とっくに地球上から消滅していらしい。

 彼、暗号名コロラドは、地球連邦軍暗殺チーム「レインツリー」
に属する暗殺者である。
コロラドは考える。
私の手で幾度、歴史の
運命が変わったか。それを述べるのはやぶさかではない。しかし、
この話とは別の問題だ。ともかくも、コロラドの手は他人の血で汚
れていた。

 しかし、そのおかげて普通の人間がI生かかっても手に入れるこ
とができない財産を得ていた。その汚染されたお金を、浄化させよ
うとした。

 この島サンチェス島にすべてを注ぎ込んだのだ。この島はコロラ
ドにとっては、いわばエルドラド。楽園だった。

気候は温暖で、
日々は過ごしやすかった。海の色はエメラルドグリーンで、渚は
遠浅だった。生活信条として、何人も、この島へ立ち入る事も許さ
なかったのだ。あの事件以来。

 そこにあらわれたのがボーン。コロラドと同じく「レインツリー」
に属するヒットマンだった。まったく思いもかけぬ閑人者だった。
確かにコロラドは二日前に、島の山間部に、いん石が堕ちた事を知っていた。

 が、屋敷にセットされている防禦システムSDIIはその物体
に対して、何らの危険性を警告していなかった。生命反応もなく、
ましてや危険物質の存在も告げてはいなかった。

 「それがどうかしたのか、ボーン」
 「とにかく、会って話をしてくれないか、コロラド、俺は何も武器
を持っちゃいない」
 「OK、少しはお前さんの言う事を信じよう。同じレインツリーの
仲間としてな」
 「用心深いお前さんの事さ、そんな事くらいはとっくにおみとおし
だろう」

そう、確かにおみとおしだった。ボーンの体やゴムボートの解析写
真はこの島の防禦機構SD11が何枚も撮影していた。ボーンの言
葉どおりに、彼はクリーンだった。武器は一つも持っていない。が、
油断はできない。彼の技がいかなる殺人技か、レインツリーの幹部
しか知らないのだから。彼は立ち上り、まわりの風景を見渡してい
る。
(続く)
1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/



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