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SF小説「アイランド」山田企画事務所

SF小説「アイランド」山田企画事務所

■アイランド■第4回

■アイランド■第4回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.co 

 よし、ビィーは待ちかまえていた。自分自身が消滅する瞬間、
それは一体、どんな気持ちなのだろう。二つの個体がぶつかる。
 『こいつは違う』
ビィーは、生体ミサイルを包み込んだ瞬間、思った。
 「ビィー」ビィーの順に声が響く。
 『君、君はだれなんだ』


 ビィーは意識が混乱しながら叫んでいた。
こんなはずはないんだ。
生体ミサイルを包み込んだ瞬間、死んでしまうはずなんだから。
『僕は、もちろん、クワノンの生体ミサイルさ』
 『でも、なぜ、僕は石化しないんだ』
 「それは、僕が、ニュータイプだからだ」
 『ニュータイプだって』
 「そうさ、我々、クワノンは、君達、地球人類と同化する事にしたん
だ」
『同化するだと』

『クワノンの歴史学者が、つい最近、新発見したんだ。クワノンと地
球人類とが同じ種から発生したものだという事実をね」
 『そんな事は信じられない』

 『君が信じようと信じまいと僕の責任ではない。さあ、ビィー、僕を
地上に連れていってくれ』
 『地球上など、僕も行った事がない』
 「何だって 君は地球人類じゃないのか」
 「そうだ、僕はバイオノイド。細胞から発生された生物機械
なのだ」
 『それはこまった。我々クワノン人は、君達こそ、地球人類だと思っ
ていたのだ』
 しばらくの間、ビィーの頭の中へ流れ込むクワノンの思考が、とだ
えた。何を考えているのだろう。しかし、彼の言った事は本当なのだ
ろうか。クワノンと地球人類が同種だって。
 『ビィー、君の行きたいところはどこなんだ』
 またクワノンの意識がビィーの内に戻ってきた。
 『行きたいところ、だって地球の事なぞ…』
 ビィーは思った。そうだアリスママの所が…
 『ママの所か、わかった』

『えっ、なぜ、僕の心を』
『君と僕とはI心同体なのさ』
『いつから』
『いまのいまからさ』
『ま、待ってくれ』
ビィーの意識はとぎれた。
 

突然、アリスは目覚めた。何かが自分の内に落下して来た。そん
な衝撃を感じた。

 『ママ、ママ………』
 体の中から声が響いてくる。自分の体にある人工胎室からの様だ。
誰だろう。現在、アリスの体の中にはバイオノイドの原料など注入
されてはいなかった。

 アリスは窓の外を吃た。アリスはアリス=ファームにいる。地表
から数千mにあるこのザ=タワーからは青空が県える。地平線もく
っきりと見えるのだ。上空を臼`あげる。その青い空のもっと上空で、
アリスの子供達が戦っているのだ。何人の子供たちが死んでいった
のだろう。もうその数を数える事すらあきらめようとしていた。

 死んだ子供の霊だろうか。空耳。
そんな事はありえない。だって
私はバイオノイドの母なんだもの。
人間的な不確実な感情や感覚などあるわけはない。

『ママ、僕は帰ってきたんだ』
 が、しかし、その声は確かに存在していた。
「あなたは一体誰なの」
『ママ、僕はビイーだよ。宇宙から帰ってきたんだ』
 『僕を覚えているでしょう、ママ』

 『ああ、ビィー、私が、自分が生んだ子供達を忘れるわけがないで
しょう。私がいままでに生んだ230人の子供一人一人を、はっき
りと覚えているわ。でも、ビィー、どうやって私の胎室の中へもど
れたの』
『ママは、信じないと思うよ。でも本当なんだ』
『なに、ビィー、あなたの言う事をすべて信じるわ』
『僕は、この星の新人類となるんだ』
『何ですって

『おちついて聞いて下さい。アリスママ』
ビィーとは違う声の響きだ。
 『だれ、だれなの、あなた、ビィーではないわね』
 「いや私はビィーの一郎でもあるのです」

 『ビィーの一部ですって、一体どういう事なの、あなたがすべてを
説明してくれるというの』
『そういう事です』


 ザ=タワーの防禦システムに、レッドアラームがついていた。
 コンソールの前のオペレーターは自らの眼をうたがった。おいお
い冗談じゃないぜ。
 ザタワーの中に侵入者がいるなんて、不可能だ。おまけにアリ
スファームだ。
 が、オペレーターはマニュアル通り、報告せねばならない。
 地球連邦軍機動兵が、アリスフアームの前に集合する。
(続く)
1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://www.yamada-kikaku.com/




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