2017/12/21(木)00:52
時間の衣を抱いて
「ポキッ」
擬音の文字の見えるような音だった。
悪夢を見るのは習慣になりつつある。
今回もきっと・・・
目を覚ますと、歯がこれまた音の文字が浮かぶように、ぽっきりと折れていた。
初めての有給休暇を使って、午後に歯医者へ行った。
働けないこともあったが、気がかりな上に、何より見た目が絶望的だった。
「こんな状態でもし身の危機があったら、死んでも死に切れない。」
何よりの急務に感じた。
楽観をしていたわけではないが、歯科医の顔はくらく険しい。
声にも重さがあって、すぐに状態を察知した。
「率直に言えば、24歳でこの状態はとても良くない。」
医師の言葉に、ああ、また運がないかと胸の内でひとりごちた。
帰り道で下校途中の小学生をみた。
こんな時間に外をほっつき歩く自分にもだが、半そで姿の子どもにおどろいた。
私なんて5枚・・・いや、日によっては6枚も着込んでいるというのに。
しかし、そこで歯科医の言葉が不思議と脳裏に浮かんできた。
「24歳で・・・」
そうか、私はまだたったの24歳だったのか・・・と。
目の前の少年も、ほんの15年ほど前の自分なのだ。
私もまた、友達と競るように薄着で登校をしていた。
年末になると、ぼうっと過去を振り返る日が続く。
この1年もまた、色々なことがあった。
1年ごとに、私を方向付ける何かしらの出来事は起こっている。
これがまだ、50年程度は残っている可能性が高いのか。
月日の重みが、歯の問題を遠ざけてくれる気がした。
もっとも、その重みが増したときには・・・