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2018年10月18日
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カテゴリ:独り言
どうにも解けないものがある。



半年ほど前に、会社で動けなくなって、救急車で運ばれた。

実家に連絡が行って、親も呼ばれた。

結構な惨事だった。

それから二週間後。

上司の強い勧めがあって、また少なからず申し訳なさもあって、実家に帰った。

顔を見せておかないといけない気がした。

案の定、余分すぎるほどの心配をされた。

すぐにでも帰りたかったが、義理を通してせめて一人の時間を多くして体を留めた。


何かが千切れたのは夕方だった。

縁側で呆けながら山や木々を眺めて、時折本を読むことを繰り返していた。

ふと車の音が聞こえた。

気づかない内に母は出かけていたようだった。

玄関が開いて、けたたましく母が入ってくる。

「ほら、運んで―」

嫌な予感が少しばかり歩を早めた気がする。

広げられた買い物袋。

そこに見える1980円の値札と4パックの鰻。

呆けと呆然は全く違う感覚だったのだなと、振り返った今思う。

最後に母は、人を殺せそうなほど大きな西瓜を抱えてきた。

青い炎が不純物を燃やして害を生んでいくようだった。

私は静かに、急速に「切れた」。


鰻は嫌いだった。

幼い頃から丑の日に、一人でタレごはんを食べていた。

西瓜は嫌いだった。

べとつくのも栄養がないのも種が邪魔なのも、一つ一つが大きな理由だった。

無駄金が何より嫌いで畏れていた。

家庭の財布も通帳の中身も幼い頃から知らされて、私生活に病的なほど吝嗇に育った。



この一連の出来事がどれほどの衝撃を持っていたか。

私は誰かに確かめる勇気もないし、求めてもいない。

ただこれは、私の一生で二度と忘れることなく、少なくとも若いうちで最も辛い経験の一つになっただろう。





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最終更新日  2018年10月18日 00時26分02秒
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