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鎌倉日記(極上生活のすすめ)

未完の放浪者

新聞(朝日)を読んでいたら、読書の著者に会いたいのコーナーで「未完の放浪者」作家の野本三吉氏を紹介していた。
野本三吉は現在、沖縄に移住して沖縄大学で教えているようだ。
20代は小学校教師と放浪、30代は寿町のケースワーカー、40代は児童相談所の相談員、50代からは横浜市大の教師と移っていった人だ。
珈琲を飲みながら、ぼんやりと、彼は沖縄に行ったのかと思っていた。

そういえば、あのとき寿町でドキュメンタリー映画を撮っていた渡辺孝明監督は、どうしたかと思って、ネットで調べたら、白髪で、あまりに老けた姿になっているので、まず笑ってしまった。長良川で映画を撮り、インドのケーララ国際映画祭で、最優秀映画監督賞を受賞したと、記されていた。
あの頃は、奥さんがパートで生活をささえていたのになあと思っていた。
まあ、賞はとっても彼は食えてるのかといらぬ心配をした。

私はかつて、寿町といわれるドヤ街、日雇い労働者の町で彼らとともに連続講演会を開いたことがある。
テーマは「単身者文化の再検討」だった。
寿町は男の肉体労働者の町だ。景気の安全弁として、労働力が消費される。
私は外国のスラム街にも入っていったが、どこも、家族主体だった。
日本には、寿町のほか、大阪の釜が崎、東京の山谷、どこも男中心でなりたっている。
不思議だった。
なぜ、日本ではこういう形態になるのか。

この街は日本の歪みの縮図だった。たんに外から見ると、汗臭い昼間から酒を飲んでいる人がいる場所にみえるかもしれない。
しかし、彼らをひとりひとり見つめると、原発労働者の下請け、福祉で救えぬ障害者、アイヌ民族、識字学級では字を知らないまま大人になる人がいることも知った。
日本では、家族が宗教なのではないかと思った。中にいるあいだはいごごちがとてもいいが、一度、はみ出すと、ひどく生きにくい社会なのではないか。

はみだされた男たち。はみだされた町。


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