2006/08/12(土)21:52
■ベスピオス山を大噴火させる声■
台風のせいで、空模様が急変する。
激しい雨あと、晴間がのぞくと、蝉が、いっせいに鳴き始めた。
きょう、海辺を車で走っていたのだが、
まるで、気難しい人の感情のようだと思った。
テレビで伝える天気予報、雲の動きの天気図が、頭の中に、入っているから、
不思議でもなんでもないが、
古人たちは、このような空の変化には、ひどく戸惑っただろう。
そして、なんらかの意味づけを探してきたに違いない。
人間は、理由のわからないものは、不安でしょうがないのだ。
どうにかして、理由を見つけ出そうとする。
イタリアの南部の町、ポンベイは、
西暦79年8月24日から25日にかけ、一夜にして、溶岩に埋まってしまった。
ベスビオス火山の大噴火だ。
このポンペイは遺跡になり、かつての都市がそのまま残ることになった。
なぜ、ベスビオス火山が噴火したのか、
古人たちは、理由を求めた。
このとき、ナポリの劇場では、イギリスからソプラノ歌手が来て、ちょうど公演をおこなっていた。
彼女の声は、高く、響きわたるような美しい声だった。
人々は絶賛した。
その直後に、大噴火がおきたのだ。
理由がわからない。どうして、山が怒りだしたのだ。
古人たちは、
これは神に祟りであり、ソプラノ歌手の、とんでもない高い声が、その原因と考えた。
彼女は、殺されかかったが、国王の力で、その場で殺されることはなかった。
しかし、
25年後、ポンペイが死の町となった同じ8月25日、夫によって殺されてしまうのだった。
台風の去ったあとの湘南の海の上には、海鳥たちが、舞いはじめていた。