イラクへの考え方

日本共産党

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民主党

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共産党の主張

 イラク問題の道理ある打開の方向は明りょうです。
一日も早く米英軍主導の占領支配をやめ、国連中心の枠組みによる
人道復興支援にきりかえること、その枠組みのもとでイラク国民に
すみやかに主権を返還し、米英軍を撤退させること
――このことこそ道理ある解決の道筋です。
国際社会の大多数も、この方向での解決を強く願っています。
いま日本にもとめられているのは、そのための自主的な外交努力です。


民主党の考え方

2003年12月02日 
「自衛隊派遣の根拠はなくなっている」菅代表
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 民主党の菅直人代表は2日、定例の記者会見を行い、イラクで殺害された
2人の外交官に哀悼の意を表すとともに、自衛隊派遣方針について国民に
十分な説明を行うため、ただちに臨時国会を開くよう政府に強く求めた。
 菅代表は、民主党の長妻昭衆議院議員が提出した質問趣意書に対する
政府の答弁書で、イラクの現状について「主要な戦闘は終結したものの、
同国内における戦闘は完全に終結したとは認められない状態にある」と
述べていることを紹介し、「(政府が)戦闘状態が続いていることを
認めたということだ」と指摘。「非戦闘地域は存在するのか。ますます
(自衛隊派遣の)根拠がなくなりつつある」として、すでに与党も開催
に合意している閉会中審査だけでなく、正規の臨時国会を開いて国民に
説明すべきだ、と述べた。
 また菅代表は、小泉首相らが「テロには屈しない」と言いながら
自衛隊派遣方針を押し通そうとしていることについて批判。
「テロを少なくし、抑え込んでいくことがもともとの目的だったが、
アフガン・イラク戦争の結果、テロは縮小するどころか拡大している。
『テロに屈しない』としてやってきたことが新たなテロを生んでいる。
ブッシュ大統領のやり方が適切だったのか。それを支持し、自衛隊
派遣を決定した小泉首相は正しかったのか。そういう原点に戻った
議論を情緒的な言葉で抑え込もうとすることには、きちっと反論していく」
と述べた。


2003年6月25日
イラク復興支援のあり方に対する考え方
民主党 イラク問題等PT 
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 基本認識
民主党は、イラクの大量破壊兵器(WMD)問題に対し、徹底的な国連査察を
通じた武力行使によらない平和的解決を訴え、米国等による対イラク攻撃に
反対した。フセイン政権の崩壊から約2ヶ月余りを経た現在に至り、WMDは
発見されていない事実を受け、民主党は、米国の武力攻撃を支持した小泉
政権の責任を厳しく追及する。また、国連安保理決議678、687及び
1441号は、今回の武力行使を容認するものではなく、とくにフセイン
政権によるWMD保有の確たる証拠なしに、対イラク攻撃が行われたのであれ
ば、民主党は、イラク戦争の正当性を改めて問いただしていくものである。
しかし、イラク国民がこれ以上の災禍に見舞われることを回避するとの
人道的見地のほか、イラクの安定が及ぼす中東和平ひいては中東全体の平和
と安定への影響、国連安保理決議1483号の採択、そして同盟国たる米国
からの支援の要望等の諸点に照らし、イラク復興支援に積極的に取り組むべ
きであると考える。また、その際、共同プロジェクト方式などにより、アラブ
諸国や周辺諸国との友好関係をさらに発展させるあり方を総合的な視点に立
って検討するべきである。
イラク復興問題の鍵は、イラク統治機構の崩壊による大混乱が続く現在、
米国とイラク側諸勢力との協議の中で、いかにこの混乱を収拾・安定化させ、
イラク国民による暫定政権を早期に樹立させるかであると考える。
従って、国連安保理決議1483号の下、わが国は、国際社会とともに、
統治再編過程と経済復興努力の両面で、わが国にふさわしくイラク国民のため
になる支援を適切かつ積極的に行っていくべきと考える。
民主党は、国連主導によるイラク政府樹立及びイラク復興が望ましいとの立場
であり、連合国暫定統治機構(CPA。旧ORHAが改組)による占領行政から、
国連主導下の統治機構再編・復興プロセスとなるよう、政府が米英に強く働き
かけていくことを求める。
 支援政策
食料や医療などの緊急人道支援は、世界食糧計画(WFP)などの配給や、国際
社会からの支援などで不十分ながらもとりあえずは手当てされており、電力
施設等のインフラも、国連やわが国などの援助プログラム等が動き始めている。
また、イラクは、豊かな資源を持ち、先進国なみのインフラが整備された国家
であったのに加え、国民の教育レベル、技術レベルも高い。これらイラクの資源
や財産を有効に活用できる態勢の整備を支援することに主眼を置くべきである。
民主党イラク調査団の現地視察の結果を踏まえた緊急・当面に分けた支援ニーズ、
それに基づく支援政策は、以下の通り。
(1) 緊急の課題
  現時点で求められている緊急かつ主要な支援を以下5点に絞った。
行政機構 
CPAや米英占領軍の取り組みにもかかわらず、イラクは基本的に無法に近い状態で
あり、イラク国民による早期の暫定政権の樹立と統治機構の安定が急務。
治安 
未だ強盗・略奪や発砲事件が継続的に発生しており、イラク国民の不安も大きい。
わが国や国際社会が復興努力を推進するためにも治安回復は不可欠。
緊急雇用 
国連開発計画(UNDP)によれば、国民の約60%が失業状態であり、とくに、
数十万人にのぼる失職中の旧公務員や旧軍人・治安関係者などの生活不安は、
反米感情の増幅、更には治安問題と結びつく危険性。
緊急人道支援
被災者、とくに高齢者、女性、子どもなど、社会の弱者による戦争の被害が
深刻であるケースが多く、その様々な緊急ニーズへの適切な対応が必要。
生活基礎インフラの整備 
電力、上下水道、放送・通信施設などの復旧が不十分なところもあり、酷暑が
近づいていることを考慮し、早急に手当てすることが重要。
【日本の貢献に関する提言】 
統治機能の再構築のための国際連携強化
従来からイラク人は、日本に対する好意と関心が高いことからも、戦後の混乱
から再生した我が国の経験を活かし、新たな民主国家の制度作りに関する支援
は惜しむべきではない。米・英等の国連主要国との緊密な連携のもと、暫定政権
の設置に向け、CPAや国内諸勢力への働きかけを強めていくべきである。
他方、イラクの統治機能の再構築においても国連の関与を高めていくことが重要
であり、そのためにも国連特別代表室に、日本人のリエゾン・オフィサーを置く
とともに、現地国連機関(UNDP、国連児童基金―UNICEF、国連食糧農業機関―FAOなど)
の日本人スタッフの増員を進め、国連・米英連合国・イラクの三者の連携強化に取り組む。
治安回復のための民主的警察制度の導入・・・「交番」システム 
警察国家だったイラクの警察機構を民主化し、治安を早期に回復させるため、我が
国警察などによる協力は、有効である。とくに、地域に根ざした民主的な「交番」
システムの紹介や、警官のモラル等に関するガイダンスやトレーニング等、
文民警察官や民間警備会社などを積極的に活用する。
緊急雇用創出のための「ジャパン・プラン」
略奪等にあった学校・医療施設や、上下水道、放送・通信施設などの復旧事業を
失業中のイラク国民を緊急に臨時雇用し、積極的に活用することで、雇用を創出する。
わが国は、この「イラク復興ジャパン・プラン」を通じ、必要な経済支援及び技術
協力を行う。
被災者のための緊急人道支援
戦争の被災者が直面する様々な問題に対する支援を遅滞なく行えるように各所に
緊急人道支援センター、とくに母子寮、救済が必要な高齢者、女性、子どもを対象
とした施設や相談所の設置を早急に進める。
外交的視点を踏まえた生活基礎インフラの整備
学校・医療施設の整備、上下水道や、放送・通信施設等の早期の復旧が急がれるが、
これらのプロジェクトをイラク国民の雇用創出に役立てるだけでなく、出来るだけ
アラブやアジア諸国等との共同プロジェクト或いは協力関係を強化する中で行うこと
が重要である。いかなる共同プロジェクトが可能か、アラブ諸国や関係諸国に働き
かけを積極的に行う。
イラク復興のための派遣職員の保護
イラクの復興に従事する職員を保護する観点から、各種の安全対策や保護措置、
特別補償制度などの諸措置を検討する。
イラク復興支援の実施を円滑化するための大使館機能の拡充
イラクでの復興支援事業に携わる民間やNGO等が、安全かつ効果的に任務を遂行する
環境を強化するために、復興参画企業支援室及びNGO支援室や国連調整官を在イラク
日本大使館に置く。とくに治安面での情報提供や邦人保護対策を強化・充実を図る。
健全な経済づくりのためのドナー支援会合及び金融システムの整備
通貨安定化をはじめとし、12年間の経済制裁で疲弊した経済・金融システムを早期
に立て直し、新規事業の立ち上げなどに役立てるため、世界銀行や国際通貨基金(IMF)
とともに、アジア開発銀行を通じたイラク復興のための支援基金を創設し、可能な
限り貢献を行う。
また、イラク復興支援会合の日本での開催などを呼びかけるとともに、イラク人の
金融・経済専門家等の意見等を踏まえながら、イラクの安定的な経済・金融システム
づくりを支援する。
なお、イラクに対する国際的債権については、国際間の協調的対応が重要である。
イラク原油の優先的購入
イラクの復興資金の財源を確保するとの観点からも、可能な限りイラク原油を積極的
に購入するよう働きかける。
【自衛隊派遣問題】
民主党イラク調査団は、
(1)自衛隊派遣の具体的なイラク復興ニーズ、
(2)憲法上の制約から、多国籍軍とは一線を画すべき位置づけをもっていること、
(3)自衛隊員の安全性、(4)イラク戦争に従来反対してきた民主党の立場―を
踏まえて調査報告を提示した。
調査団の報告は、憲法上の制約から自衛隊が反乱鎮圧に直接的に貢献することは
できないが、イラクの治安維持を担っている米軍等に対し、日米関係の視点から、
間接的に貢献できる可能性は否定し得ないとしている。
しかし、具体的な復興分野では、民間の専門家、民間業者やNGOが、失業中の
イラク専門家、公務員等を雇って事業を推進した方が効率的かつ雇用創出にも
つながる。これらの観点から、自衛隊でなければ果たせない緊急ニーズの特定は
困難との見解が示された。
また、派遣自衛隊が、占領軍の一員と捉えられる恐れもあり、イラク国民から
もろ手をあげての歓迎とはならず、中・長期的視点に立った際、わが国の対イラク
政策上、また対中東政策上、わが国の国益に資すとは言えない可能性が高い。
自衛隊派遣については、以下の問題点を精査する必要がある。
(イ) PKO5原則を満たさない条件のもと、自衛隊でなければ果たせない緊急ニーズ
を現在特定することは困難
(ロ) 不安定な治安状況のため、現状では戦闘区域と非戦闘区域、或いは戦闘員と
非戦闘員の区別が困難であると同時に、反対勢力が対戦車ミサイルなどを使用しており、
任務遂行には危険
(ハ) 米軍指揮下の活動は反対勢力から標的として攻撃されやすくなる危険
(当面は難しいが、可能であれば、国連派遣の部隊とすることが望ましい。)
(ニ) 米国による占領統治が長期化するほど、イラク国民からの反発が強まる怖れが
ある中、派遣期間の見通しが不透明、等。
(2) 当面の課題と提言
イラクにおいて民主主義が定着し、持続的経済発展が遂げられるような民主化支援の
ための各種プログラムを検討すべきであり、とりわけ教育面における支援を充実させる。
その際、欧米型民主主義モデル、或いは日本のモデルがそのまま現地に適するとは限ら
ないことを十分に踏まえ、現地の事情を的確に把握したプラグラムを実施すべく留意
すべきである。
日本の企業等が過去に携わった公共事業やインフラから重点的に支援していくことが
適切と思われる。その際、貿易保険が弾力的に適用されるよう優遇措置を早期に検討する。
文化に重きを置く日本として、散逸したイラクの文化遺産の収集や復旧等への協力等、
文化遺産の保護に力を入れる。
【ニーズがあると思われる具体的支援項目】
  緊急の課題
国連機関との連携強化(国連特別代表室へのリエゾン・オフィサーの派遣や、現地
国連機関の日本人スタッフの増強など)
警察機能の整備等のための協力(「交番システム」の紹介など)
緊急雇用対策(「ジャパン・プラン」を通じ、職業訓練など)
緊急被災者支援センターの設置等(母子寮、相談所など)
上下水道、発電所・配電所や放送・通信施設等の復旧
(アラブ諸国等との共同プロジェクト方式)
化学・生物兵器、劣化ウラン弾、クラスター爆弾、
地雷・機雷による被害者の調査、治療及び対応
邦人の保護対策
大使館機能の拡充(復興参画企業支援室やNGO支援室の設置など)
金融・経済システム安定化の取り組み(通貨安定策、イラク復興支援基金の設置等)
イラク原油の優先的購入
NGOの活動の後押し(資金面、現地大使館を通じた情報提供の強化など)
  当面の課題
インフラ整備等(橋、病院、精油所等、日本が過去に手がけたものを重点的に実施)
女性のエンパワーメント
・ 寡婦への雇用支援(マイクロ・クレディットなど)
・ 母子保健(リプロダクティブ・ヘルス)への支援等
孤児対策
ハンディキャップ対策
コンピューター・リタラシーの向上
文化遺産の保護、等

2003年6月11日
民主党イラク調査団報告の概略
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※以下は、民主党イラク調査団がまとめた報告書の概略を広報・宣伝委員会
がまとめたもの。
調査団メンバー及び日程表
(1)団員
 末松義規衆議院議員(「次の内閣」イラク問題等PT事務局長=団長)
 首藤信彦衆議院議員(「次の内閣」外務副大臣、外務委員会理事=先遣)
 若林秀樹参議院議員(国際局副局長)
(2)日程
 6月2日~8日 ヨルダン(ヨルダン政府高官との会談)及び
         イラク(各方面の関係者との会談、視察)
報告のポイント
1 戦争被害と支援ニーズ
米軍攻撃(バグダット)は、かなり正確なミサイル・ピンポイント攻撃であり、
地上戦の痕跡はあまり見られないことから、限定された軍事目標のみ被害を
もたらした程度。むしろ、主要な被害は、戦争時の広範な強盗・略奪・放火に
よって生じたもの。さらに、とくに、長年の軍事優先の政策がもたらす社会の
疲弊に加え、13年間に及ぶ国連経済制裁による経済的ダメージが大きい。

従って、どのレベルまでの回復・復興が必要かという判断の下、短期・中期に
支援ニーズを分けて詳細に検討していく必要がある。特に、前政権崩壊から
暫定政権樹立までの混乱を最小化するための支援が必要。
2 イラクの治安・統治問題
復興における最大の問題は、フセイン・バース党政権追放による統治再編の
大混乱を米国とイラク側諸勢力との話し合いの中でいかに収拾・安定化させ
ていけるか否かに尽きる。その意味で、米国主導のしたOCPA(または、
CPA。連合国暫定当局)の統治再編過程と、国連主導の国際的な経済復興
努力は、車の両輪となるものであり、双方で適切な協力を行っていくことが
重要。米国等の占領は、長期化となる見込み。
治安維持の要は米英軍が担っており、治安状況はかなり改善されているものの、
米軍に対する小規模な反乱はイラク中西部を中心に継続的に生じている。
3 自衛隊派遣問題
多国籍軍のメンバーとなり得ない自衛隊の派遣については、治安維持などへの
支援ニーズは否定し得ないものの、イラク国民に直接見え、手放しに歓迎され
るような復興支援ニーズを特定することは困難。
現時点での治安状況では、戦闘区域と非戦闘区域を区別することは困難であり、
最近の武装反乱活動などを考えると、現在の防護武器や、武器使用基準では
不十分と言わざるを得ない。
純粋な支援マターと捉えるよりも、日米関係に焦点を当てた優れて政治的な問題
とし認識すべきとの指摘あり。因みに、イラク戦争に反対してきた仏、独、加、
露、中国は、軍隊派遣やOCPAへの要員派遣を行っていない。






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