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シェフの落書きノート

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2005.12.29
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カテゴリ:心の中の記憶
『酔月#3』からの続きです。

前編は…。
初めてのバイト体験記
初めてのバイト体験記 #2
酔月
暴走族 酔月 #2
ディスコ 酔月#3


写真を撮った時は営業時間外だったので現在の看板だけ、かなり古ぼけたかな…あの頃よりも…
酔月 看板




高校生の時にしていたバイト。
酔月と言う名の大衆酒場…。

カウンター(板場)に入って料理を作っていた頃。
友達たちも、焼き鳥を食べに来たりして店に寄っていた。

後ろに視線を感じて振り返ると…
「エェッ!…せ・先生…」
びびっくりした…。

笑っている…。
「ここでバイトしてたのか…」
担任の先生が笑みを浮かべながら焼き鳥をほうばりながら呟いた。

「いらっしゃいませ…」
とりあえず声をかけた…。

「いい顔してるな…頑張れよ!」
ひと言そう言った。

飲み屋でバイトするとは何事だ…
なんて怒られると思ったら…
「頑張れよ…」だって…。

オイラが行ってる高校は公立の高校だったから校風はゆるかったけど…。
本音を言えば…ちょっと拍子抜け。

そして、ひとつ年上の彼女もオイラのバイトが終わる時間を見計らって食べに来たりした。

彼女が、どじょう鍋を注文した時は、ちょっと驚いた。
「えっ?食べてみるの…?」
「うん…。美味しく作ってね…」

やっぱり好きな人に、作るのって気持ちが入る。
桶に泳いでいる”どじょう”をすくう時も
良いのをと思ってみたり…
同じようなのが泳いでいるんだから変わらないのに…。

出来上がって彼女の前に…
他のお客様の料理を作りながら…
彼女の食べてる仕草を横目で見たり…

バイトが終わってから一緒に帰る。
横須賀中央から、衣笠の近くに住んでいる彼女の家まで送っていく。
話しながら歩いて…

本当ならバスで行く距離。
でも…バスだと…すぐに着いてしまうから…

いつも、ふたりで歩いて行く…。
少しでも長い時間…一緒にいたかった。

「どじょう鍋…どうだった?」

「ん…美味しかったよー!温かくて…。」

「頭から食べてたから、ちょっとビックリしたよ!」

「え?だって…どうやって頭とったらいいのか…わからなかったから…」

「ははは…そうなんだ」

「でも、意外に美味しかった…。柔らかかったし…」

「そっか…。良かったー」

彼女の答えは、いつも可愛く感じた。

この頃、横須賀にも沢山の喫茶店があった。
巷では、『学生街の喫茶店』というガロとバンドの歌がヒットしていた。

世に言うフォーク・ブーム…。

「今日は、ババを食べにいかない?」

「いいよ。あれ…どうやって作るんだろう?」

「んー。プリンみたいに作るのかな…今度調べとく…」

ババとは、ババロアの事。
喫茶店のメニューの名前を省略して言うのが、ふたりのブーム。

彼女とは、何を話していても、何をしていても楽しかった。

公園のベンチで座っている時も…
連れ添って歩いている時も…
電話で話している時も…
ただ一緒に時間を共有するだけで…

何もかもが楽しく感じられた。
でも、彼女をディスコに連れていった事はない。
彼女の家の門限に間に合わない…。

オイラの給料が入ると、レストランで食事をする。
その頃のオイラ…
彼女とレストランに行くと…
椅子をひいてあげたり
彼女が座ってから自分が座るなんて事を当たり前に思って実践していた。

小学校高学年の時、父親がメキシコに転勤。
家族も移住…なんて騒ぎがあって…
毎日、ポークソテーやらハンバーグやらを食べさせられて
ナイフ、フォークの使い方を練習させられ
レディ・ファーストまで叩き込まれた。
結局、家族の移住は中止、父親の単身赴任も半年で終わった。

その影響からか、レストランのマナーは、当たり前に皆がする事と思い込んでいた。

今、考えると笑ってしまう…
お客様で、そんな事してる高校生なんていない…。

大人でもレディ・ファーストを実践してる人なんて数少ない。

彼女の家に遊びに行った事があった。
その時、彼女のお母さんが部屋に入ってくると…
彼女は、いつも慌てて追い出していた…。

それも可愛い仕草に見えて…笑ってしまった。

ある日、大きな皿の上に沢山のシュークリームがのって出てきた。

お母さんが微笑んで…
「これ、この子が作ったんですよ。食べてみてくださいね」

「えっー!これ…作ったの?」

「…うん…失敗しちゃったけど…」

ひとつとって食べてみる…。
「うまーい…。美味しいよ…これ作ったんだ…凄いなぁ~」

「え?美味しい?…本当?」

「うん!美味しいよ…。何処失敗したの?わからないよ…」

「ちょっと…ふくらみ方が…」
恥かしそうに彼女が言った。

「そうなの?俺には、わからないけど…。どうやって作るの?こんなの俺、作ったことないよ」

「水を沸騰させて…バターを入れて…小麦粉入れて練るの…そして焼く…」

「え?…水を…???」

この頃、シューの作り方なんて、チンプンカンプンだった。
ただ、只…凄いと思った。

彼女もオイラの部屋に遊びに来たりしていた。

ある日、いつもの待ち合わせ場所。
約束の時間に行くと、彼女が待っていた。

うつむいている…。
元気がない…。

「どうしたの?身体の調子でも悪い?」

「…………。」

「ん?どうしたの?いつもと違う…。何でも話すって約束したろ?」

「………知らないの?本当に知らないの?」
彼女の重い口が、ようやく開いて小声で言った。

「何が?何の話?わからないよ…」

「そっか…。知らないんだ…。本当に知らないんだ…」

「だから、何の話?何言ってるか…わからないんだけど…」

彼女は、うつむいて、ゆっくり歩き出しながら…

「あのね…。ちゃんと聞いてくれる? あのね…」

「うん…。いつもちゃんと聞いてるよ…。どうしたの?」

「あのね…。あなたのお母さんから家に電話があって…。お付き合いをやめてくれって…」

「はぁ?」

聞いた瞬間は、彼女が何を言っているのかわからなかったが…
話の内容を把握するまでに時間はかからなかった。

後頭部を後ろから思いっきり殴られた気がした。
目の前が真っ暗になった。

しばらく言葉がなかった。

母親から、「彼女と交際をやめろ…」なんて言われた事は無かった。
なのにダイレクトに彼女の家に電話をして…
しかも、彼女の母親に「うちの息子との交際は、やめてくれ…」と言ったという。

しかし…。
心当たりが無かった訳ではない…。

祖母に料理を作った時…。
誰もいない部屋に祖母に呼ばれた…。
キチンと正座をして祖母は、こう言った。
「ここに座りなさい。話があります」
いつもと違う祖母がいた。
祖母の前に、オイラも正座をして座った。

オイラの前に一枚の写真をおいた。

「この人が、お前の本当のお母さん…」
そこには、生まれて数ヶ月後のオイラを抱いた知らない女性が写っていた。

知っていた…。
ずーと前から…子供の頃から…知っていた。

この人は、本当の母親では無いと…。
本当の母親は、何処かにいると…。
ずーと前から知っていた。

でも…。
その真実が現実になってみると…。
涙があふれ出てきた…。

祖母は、これから一緒に会いに行くと言って
タクシーを止めてオイラをのせて行き先を告げた。

そこには、妹がふたり
オイラの親父に良く似た彼女らの父親。
そして写真より少し老けた実の母親が待っていた。

驚いた事に、オイラの父親とそっくりな人と再婚していた。
オイラの父親より若干若いのだが…。
親父の事を本当に思っていたんだな…と思った。

妹達は、「お兄ちゃん…」と自然にオイラを呼んだ。
彼女らは、ずーと前から知っていたんだな…
オイラは、今日…妹がいると知った。
正直…戸惑った。

(それから数年…交際は続いたが…
実母のご主人が事業に失敗して行方がわからなくなった)

「誰を信じたらいいんだろう…」
実母と対面をした時…思った…。

それから、数週間した時。
母親に、実母に会った事を告げた。

この日以来…。
彼女の様子が、なんとなくおかくなった事は事実かもしれない。

彼女の家に、オイラとの交際をやめてくれと…。
オイラに何も伝えずに電話をする事くらいは、良く考えれば考えられる事だった。


「だから…もう…会えなくなるんでしょ?………」
彼女の最後の言葉は涙声になって…
聞こえなかった。

「いや!会う!何で会えなくなる?そんな事…誰の指図も受けない…」

「…そんな事…できる?…」

「とりあえず…。会う…。後の事は、ちょっと考える…」

怒りがこみ上げて…
こう答えるのが…やっとだった。

本当に誰も信じられなくなった…。



Born To Run『酔月 #5』 へ続く…。










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Last updated  2023.10.15 23:05:08
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