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カテゴリ:読書、映画、ドラマ
図書館で借りた本を読みました。
婚約者は、私の妹に恋をする [ はなぶさ ] 婚約者は、私の妹に恋をする 2 [ はなぶさ ] タイトルの語呂がよくある感じで、これまたよくある設定だなーと思いながら手に取りました。 そろそろ返却期限だな、と読み始めたら…すみません侮ってました。 すごいお話でした。 ライトではないです、重い重い。 主人公のイリアは、幼少の頃からの婚約者ソレイルと、美しく病弱な異母妹シルビアとの初顔合わせの茶会で気づきます。 二人がひかれ合っていることと、そこから先の人生を繰り返していることに。 侯爵家のソレイルと、伯爵家のイリアは政略結婚をすることになっていますが、イリアはソレイルに惚れてしまっているため、彼に近づく女性を牽制しすぎて、評判はよくありません。 侯爵家に嫁ぐから、と淑女教育や外国語、領地経営などいろんなことに幼い頃から励んでいるのに、いつでもシルビアが両親や婚約者の視線を、愛情をさらっていきます。 そのうち、シルビアの死によってそのときの生が終わることに気づきます。 一度目はイリアとシルビアが結婚したあと、シルビアが強盗殺人という形で死にます。 それをイリアの策略とソレイルに疑われ、離縁され、投獄、獄中で死にます。 二度目は強盗殺人を回避しますが、シルビアは病に倒れ、イリアを差し置いて見舞いに行くソレイル。 具合が悪くなり倒れたイリアは、医師から妊娠を告げられるも、悪阻がひどくすぐには見舞いに行けません。 回復してから、ソレイルに見舞いに来るように言われて行くと、シルビアからソレイルへの気持ちを告白されます。 それに対し許すとも許さないとも言えないまま帰ると、シルビアが泣いていたとソレイルに責められます。 何も言っていない、と返しても信じてもらえず、おなかの子が別の男の子だと疑われる始末。 そこからまた体調を崩し、なんとか出産するものの、子供を抱き上げることなくイリアは死にます。 三度目は、生んだはずの自分の子供がいないと叫び、まだ結婚もしていない時期だったので、狂ったと周りに認識され、軟禁されることになります。 その後イリアとソレイルは結婚しますが、イリアが強盗団の魔の手からシルビアを守るべく画策している間に、ソレイルとシルビアは通じあい、シルビアが妊娠してしまいます。 絶望の中、イリアはシーツを裂いて縄を編み、首を吊ります。 現実から逃げ出すべく護衛と出奔したときは、計画が漏れていて護衛のみ殺され、護衛の婚約者に責められ、ソレイルと一旦結婚するもののすぐに離縁され、修道院に送られて病で死にます。 この反省から、自分の受けてきた教育をすべて妹に伝え、一人で失踪することにしますが、人買いにさらわれ、娼館に売られ、病が重症化していたときに護衛に発見され、夫婦となったソレイルとシルビアの屋敷に引き取られ、のち死にます。 読んでいて、とても、つらい。 イリアの願いはただひとつ、愛されたいということ。 最初は婚約者のソレイルの愛だけを求めているように見えましたが、そもそも両親がシルビアを溺愛し、イリアを育児放棄に近い振る舞いをしていたことから、愛を求めるようになったことがわかります。 更に、なぜ両親の愛が得られないのか… シルビアの母は他国の姫で、騎士である父と駆け落ちのように結ばれました。 亡命してきていたわけで、国内情勢の回復によって姫は帰国しますが、自分の愛する人が他の女と結ばれないように、監視を込めて自分の侍女と結婚させます。 それがイリアの母でした。 しかし帰国後も、イリアの母に隠れて逢瀬を重ね、シルビアを身ごもったのです。 イリアが娼館で飲んだ劇薬のような薬と、母ぐシルビアのために煎じたというお茶のにおいが似ていることに気づき、母を問い質そうとしたところ母は呪いのような言葉を残して自殺します。 「あなたのことを、一度も愛せなかった」と。 呆然とするイリアを横に、家令や侍女、父が状況を判断しようとします。 父はどうやら、イリアが母を手にかけたと思っていて、自室に軟禁されます。 …すべての元凶は父なんですけどね。 イリアが何度も辛い生をやり直すのか、結局はこの、母によるシルビアの殺人計画の暴露及び阻止、イリアが愛されない理由を知るためだったのでしょうか。 いろんなことを考えながら読んだので感想が長くなります… 「悪役令嬢」「転生」という、小説家になろうでもお馴染みの「テンプレ」。 いわゆるヒロインは、明るく健気で、お高く止まったライバルにいじめられるも、ヒーロー(王子様)が助けてくれて、結ばれてめでたしめでたし。 ですが、その性格の悪いライバルを主人公に置き、主人公の明るさはがさつさ、非常識に通じること、いじめではなくマナーを教えているのを被害妄想でいじめられていると感じていること、そんな悪役令嬢のよさをわかってくれる別の王子様がいること…そんな流れのストーリーです。 このお話でも、シルビアは無邪気に振る舞いますが、病弱だからと学ぶ機会がなかったため、淑女としてのマナーがなっていません。 イリアは貴族として婚約者として姉として、どう振る舞うべきかを常に考えるせいで冷たく思われがちの、まさしく悪役令嬢です。 でも、イリアには救いがありません。 ソレイルとシルビアが出会い恋に落ちる茶会以前にも、イリアとソレイルは何度も会っています。 幼い子供ながらの、ほのぼのとしたエピソードがいくつもあって、これでなぜ2人は結ばれないのかと思うくらいです。 一巻の最後に、ソレイルはイリアのことを憎からず思っているものの、うまく言葉や態度に表せない…どころか、何かの意志がそれを妨げる、といった描写がありますが。 散々イリアの不幸を読んできた身にとっては、もう今更…という気持ちにしかなりません。 ソレイルは振り向いてくれない、シルビアは悪気がない、どう行動しても自分とは結ばれないのだから、いっそこの恋を捨ててしまえば…と何度も思うのに、恋心はインプットされてしまっていて、どうしようもありません。 最後の最後で、シルビアがソレイルに「お姉さまには他に好きな人がいるようだ」と言ったことがわかります。 そのせいでソレイルはイリアを信じることが、愛することができなかったのではないでしょうか。 イリアとソレイルの、子供の頃からのいくつものエピソード。 恋のかけらはいくつもあったのに、ソレイルはシルビアに一目惚れしてしまったし、そんなことを聞かされてはイリアに気持ちが向くはずもありません。 思春期なら誰もがつきそうな、小さな嘘だったはずなのに、イリアはつらい半生を何度もやり直すはめになるとは、思いもよらなかったことでしょう。 転生していることすら知らないのです。 2巻のラストは、ソレイルとシルビアの二人の子が、自分たちの両親と母の姉イリアについて語るのですが、これはイリアが娼婦になったときの「その後」です。 自分の嘘のせいでソレイルを手に入れられても、その後姉が娼婦になり、病で見るも無惨な姿になり、死んでいったことに罪悪感はなかったのでしょうか。 無邪気とは、ときに残酷なんだと思わされます。 ラノベはハッピーエンドだけではないのですね。 感動とは、心を動かされることであって、必ずしも良い感情だけではないのですよね。 登場人物や場面の描写が少ないと、世界が狭い話に思うことが多いのですが、つらい話なのに淡々としたこの文体、文章、ストーリーはすごいと思いました。 この作者さんのお話、また機会があれば読んでみたいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.10.01 08:41:54
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