図書館で借りた本をようやく読み終えました。
二回くらい延長したので6週間借りていた…?

アルカイダから古文書を守った図書館員 [ ジョシュア・ハマー ]
古の学術都市と呼ばれるマリのトンブクトゥ。
そこで暮らすアブデル・カデル・ハイダラは
亡くなった父が管理していた
ハイダラ家に伝わる古文書の管理を
父の遺言で任されることになります。
トンブクトゥは侵略と略奪に度々さらされ
多くの古文書が個人の手で隠されているのを
適切に管理させてもらうことを
アフマド・ババ研究所から託されます。
この旅はなんとも過酷で、距離はあるし
ランドクルーザーなんかで乗りつければ
奪われると思って頑なに拒否されるしで
小舟に乗ったり歩いたりラクダに乗ったり。
大金を払ったりして数多くの古文書を
研究所に運んで管理することに成功します。
…この辺りは冒険譚を読んでいるようで
(間違ってはいません)ドキドキしながら
ページをめくる手が早くなりました。
まるで現代の話ではないような
生活レベルの差を感じてしまうことも。
しかし時はアメリカ同時多発テロの起きた
あの頃で。マリにもイスラム原理主義が
彼らのイスラムを主張して侵攻します。
主な組織の変遷、主導者の生きざまなどが
説明されているのですが、馴染みがないため
なかなか難しく、読む速度は遅くなり
「難しいんだよね…」と続きを読まなくなり
しかし読まなければ… と延長したわけです。
ハディースという、組織が重んじる
規律を定めた記述に反する行為は
すぐに捕らえられ、鞭打ちの刑や
手首、足首の切り落とし、死刑など
多くの犠牲者が出ました。
トンブクトゥの人々は昔から
イスラムを信仰してきたのに、
宗派や主義の違いからそれらを否定され
音楽や芸術を奪われてしまいます。
マリ自体の政情が不安定で
軍隊もまるで体をなしていないため
アメリカやフランスが介入します。
ニュースなどで見る軍による空爆には
こういう背景があったのだと気づかされます。
アブデル・カデル・ハイダラの働きで
集められた数々の古文書は
45の図書館で管理されていましたが
過激派組織に燃やされるか
身代金を要求されるかという危機にあり
鍵のかかる大きな箱、それがなくなれば
小さい箱、ドラム缶から箱を作ったりして
そこに詰めて首都バマコまで運び出すことに。
こちらの方が収集するときよりはるかに
過酷な旅となりました。
まず箱詰めの段階から組織の目をかいくぐり
明かりを落とした図書館での作業ですし。
バレたら手首を切り落とされるわけですし。
アブデル・カデル・ハイダラの甥のモハメドが
度々の検問、拘束に心身は疲労し、賄賂を渡し
1000kmもの道のりを一週間かけて進んで
なんとかバマコまでたどり着いたら
すぐに折り返し次の旅の準備をする。
これを30回ほど繰り返したわけですから
もうすごい以外の言葉が見つかりません。
過激派組織が撤退してもまだテロは続き
2015年になっても古文書はトンブクトゥに
戻せる状況ではないものの、
デジタル保存や修復を進めている、という
ところで本書は終わっています。
…今外務省の渡航情報を見てみると
本文には出てこなかったと思われる
別の過激派組織によるテロが頻発。
2022年にも軍事基地の襲撃や
欧米人の誘拐事件がおきているようです。
過激派組織が侵攻してきたのが2011年で
この年は東日本大震災があり
直後に息子が生まれ、育児に明け暮れて
マリでの緊迫した事態を知りませんでした。
同じくマリの人々も、遠く離れた島国の
震災などは知らなかったのではないかと。
しかし復興庁のホームページを見ると
「海外からの支援に対する感謝」として
大統領からお見舞いの表明があったようです。
大統領…(本文中では亡命します)
今はロシアによるウクライナ侵攻や
イスラエルとハマスの軍事衝突のニュースを
連日耳にしますが、それ以外の地域でも
紛争などは起きていることを
忘れないようにしたいと思います。
ふぅ… 今日はやさしめの本を借りよう。
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