テーマ:詩&物語の或る風景(1049)
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時々、宇宙船の丸い窓が、ふと思い浮かびます。
両腕を掻き毟りたい気分だった。丸い窓の外、魚眼レンズで見た景色みたいにぶよんとゆがんだ地球を見た時。あそこに、もう、戻れないんだと思うと。 青と青に、白が優雅に混ざって、キレイ。丸くて、キレイ。どこから見ても、丸くて、キレイ。どこから見ても、僕を裏切らない丸さが好きだと思った。 あんなに、キレイなのに、もうだめなの? ただ小さくて、小さくて、見えないだけ? 小さいものは、僕には、見えないの? どんなけ大きければ、見えた? 僕は、丸い窓の縁を無意識に何度も何度もなぞった。接合部分の溝の跡がなぞった指の表面に付く。 この船は、なんて、狭いんだろう。 やばい。気持ち、悪い。 「い。やだっ」 ガタ、と音が鳴った。あぁ、教室で当てられた時に、起立する音だ。僕は、当てられるのが嫌だった。本当に。こんな所で、やっと言えたのか。 みんなの視線が、僕に向けられる。誰一人漏れることなく、みんなみんなが、僕を見る。足元から、さぁっ、と、たった今張り詰めた空気が這い上がる感覚。 あ、タガが外れるって、このことかも。 口が、勝手に、喋り始める。 「いやだっ、こ、わい、こんな、狭いなか、どこまでも、行くなんて、行けない。え、いつ終わるの? 誰も知らないのに、こんなに、狭い。そんなのって、死んでるのと同じ」 死ぬ、なんて言っちゃだめだって、誰かに言われなかった? でも、この言葉しか、浮かばないから、この言葉しか、今は使えなくって。 「飛び立つとき、空に向かってるのに、水が胸の中に溜まってくみたいな気分がした。だんだん、だんだん、頭の方に、水面が上がってくる感じがした」 僕は、もう、頭が痛くもないのに、頭を抱えていた。 「沈没船だって、これ」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.08.14 22:28:13
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