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ザワ。
いつもそうだ、まず最初にザワザワしてくるんだ。 喉の下のあたりから、ザワザワしたものが生まれて。 そうしたら、もう僕の意思とは関係無し。 本能的に敵を感覚的に捉えると、両手がぐぃと持ち上がって、体が急に軽くなる。 さっきまで暗雲垂れ込める日の海面みたいだった瞳の色は深海みたいに深く深く色を変える。 もう覗けない、深海色。誰も、僕のことを覗けない。 「あぁ、とても、今日は調子が良い気がする。」 吸血鬼が獲物を前にした時みたいに僕は口内で八重歯をチロリと舐めた。 なんだ、この感覚。でも、この感覚を知っている。 いや、この感覚が無いと生きている意味がない。とても、心地良い。 急に様変わりした僕を見て周囲の人々は恐れ戦くいているのが分かる。 だって尋常じゃないもの、僕。今の、僕。 次のターゲットは自分かもしれない。そう危機感を覚えるのか、人々は巧みに息を潜めようとするのが感じ取れる。 ふふ、大丈夫だよ。 場の空気が冷えて、冴えて。 そんな中だった。 「ブロンド髪の天使は狩人、か?」 あぁ、あの美しい声だ。 彼は目深にかぶっていたテンガロンハットを右手でスッと取ると、口元を隠すように持っていった。表情が、分からない。ガーネット瞳はとても静かすぎて。笑ってる? それとも無表情? ラズべリ、あなたは、どう、思う? 「好きだけどね、そういうの。でも、今は、ダメ、かな。」 優しい声だと思った。 「・・・」 さっさと敵を仕留めようか、それとも、ラズべリに構ってもらいたい? あぁ、あのザワザワが収まらない。違うんだ、べつに、狩りたいわけじゃない。 とてもザワザワして、考えることなんて意味なくて、ただただ、そこにいるモノをこの両手で仕留めたくて。それは僕じゃなくて、僕の体が自然に欲しいと思っているだけだと思う。 「気持ち・・・? そんな、じゃなくて。ラズべリ。なんで、ダメ?」 「可愛いから、かな。」 「?」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.08.29 00:58:21
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