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カテゴリ:ふぇいばりっと ぶっくす
「 黄 色 い 本 」 高 野 文 子 著 講談社 発行 漫画を読むヒトなら、一度は手にしたことがあるであろう、名匠、高野文子さん。 実は私、優等生っぼいあっさりした絵柄が物足りなくて、読まず嫌いだったのです。 それが今では、定期的に読み返すほどの心酔っぷり。 で、今回「黄色い本」に取り掛かる前に、 私にとっての“ハジメの一冊”からご紹介します。 実は 読み返し率は こちらの方が高かったりします。 本題については、今しばらく、お待ちくださいまし☆ それは、ふと気が向いて古本屋で求めた 「棒がいっぽん」 (マガジンハウス 発行) から始まる ものがたり… 一話目の「美しき町」は、昭和20年代後半頃が舞台。 新婚夫婦が工場近くの団地で暮らしている日常が、静かに描かれます。 過不足のない描線で、情景や心理がさりげなく綴られてゆくのです。 まるで小津安二郎の映画のように淡々と…。 心に沁みました。 若き日の両親を見ているようで、どこか懐かしく、 過ぎ去った時間を眺める 甘やかさと哀しさ… どんなに良い作品でも、出会うべき時期があるようで 私にとって、高野作品を堪能できる年齢は、なんと40代!本当に、がさつな人間です~☆ 第二話「病気になったトモコさん」では病床のゆるゆるとした時間の流れが。 第三話「バスで四時に」では、どきどきする「初訪問」の長い道中が。 第四話「私の知ってるあの子のこと」では、子供ゴコロのひそかな葛藤について。 …それぞれ、丁寧に 絶妙のアングルで 描いてます。 そして…! 五番目が、「東京コロボックル」!!!!! これは、ホントに傑作です。 これぞ、おとなによる おとなのための おとなのおとぎばなし 映画以上に、映画的。 かつ、漫画でしか醸しだせない大吟醸のあじわい コロボックルといえば児童文学の名作、佐藤さとるの「コロボックル物語」 こちらも大好き☆ また、イギリスの作家メアリー・ノートンによる「床下の小人たち」も、素晴しい☆ ―――で☆ 「東京コロボックル」は「床下~」のOL版といえるかもしれない …けれど、決定的に違うのは 描き手の目線です。 「床下~」がどちらかというと小人たちを冷静に 厳しい現実に即して見ているのに対し、高野作品は 存在を慈しんでいるカンジがするのです。 多分、書き手が ずぼらなところも勤勉なところも ひっくるめて「人間」を、 また、この世界を 愛しく思っているのでしょう。 高野作品の一番の魅力は、やはりそこに凝縮される気がします。 読後、なんだか、ヒトが愛しくなるんですよ~ 人間不信になるニュース・出版物・映像が横行している昨今、 高野ワールドは貴重な、ヒトを信じるツールになっているのかもしれません。 小人だけでなく、普通サイズの人間も、モノでさえも 山上の空気のような清々しさに包まれてるのが、高野ワールド 雑然とした現実からの避暑地、なのかな。 「棒がいっぽん」の最終話は… 「奥村さんのお茄子」 星新一を思わせる洒落たSF風味のストーリーに、昭和の日めくりが風にぱらぱらとめくられて…☆ ううっ、一から十まで語りたくなるけれど、鉄の意思?で 筆を止めましょう。 ???と思いながらページをめくってゆくスリリングな時間を プレゼントしたいから… 上質の映画を観たような、余韻の残る読後感を保障いたします。 できるだけ ゆっくりと読み進めてくださいまし。 できれば 静かな場所で たっぷりとカフェオレなど用意して☆ というわけで、本題の「黄色い本」については 「アシタのココロだっ!!!」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006年10月23日 11時53分54秒
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