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カテゴリ:ふぇいばりっと ぶっくす
「 富 士 日 記 」上・中・下 武 田 百 合 子 著 中央公論社文庫 この本のファンは 結構多いのではないかしら? そして 声高に そう言うのではなく ひっそりと 大切に 本棚と 心の定位置に そっと収めているのでは… 私が 最初に読んだきっかけは 美しい眼の友人が 「いい本ですよ…」と教えてくれたことでした。 以来、私の本棚にも 定位置が確保されるようになりました。 内容は 作家武田泰淳の妻として 冨士山麓の別荘で過ごした 13年間の身辺雑記。 生活の記録簿として 日常のあらゆること、 印象に残った情景 買い物メモ 献立 などが 素直に 描かれています。 出版される契機となったのは 夫の追悼号の為に と頼まれ 日記の一部を公開したことだそう。 以来、愛すべき記載者「百合子さん」は 多くの読者を 励まし 勇気づけているのです。 日記文学というジャンルができるほど 多くの著名人の日記が出版されてますが その中でも、当時 普通の主婦だった百合子さんの記述は 抜群に 魅力的!! その理由は 人目を意識しない無垢の言葉と 天性の 明るい性質にあるのでは…と思います。 豊かな人間性が 地下水のように 文章の奥に流れていて いくつもの泉が湧き出るように 日々の出来事を語っている… そんな印象を受けます。 エネルギーに満ちあふれていて 人間が好きで(ことに夫が!!) 強くて 明るい 百合子さん 時に 悪態をつき ストレートに感情をぶつけながら 野生の草花のように 太陽を仰ぐ姿は 読む人を 元気にしてくれます。 年表や 日記から 苦労も読み取れますが それらを 負の感情に転化しない… という“百合子さん流”を 指南してくれるのです。 私の好きなブログのひとつに「学者犬」さんのページが ありますが、淡々と綴られる メニューなどに ちょっと 「冨士日記」を感じたりします。 読むのが とっても楽しみ♪ 真似てみようと 思ったこともあるのですが これが、できそうで できないんですね。 生き方 人間味 などが わずか数文字の献立に 見え隠れするようです。 泰淳作品は「十三妹」しか持っていませんが 百合子さんの運転する車の助手席で 激怒している姿とか 手料理に舌鼓をうっている姿など まるで ご近所のおしどり夫婦のように 親しく思えます。 「冨士日記」は 女性のための 小さな椅子。 豪華ではないけれど すわり心地が良くて 暖かな 座布団つき。 疲れたとき 台所の片隅で ちょっと腰を下ろすための… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006年10月27日 06時30分10秒
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