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しげぞーの他人には厳しく

閑静な住宅地住民の権利について考える

閑静な住宅地住民の権利について考える 2003年7月31日(木)

 今回は現在騒がれている世田谷の深沢ハウスと地元住民の権利について考えたい。

 深沢ハウスとは世田谷区深沢の都立大学工学部跡地に建設中のマンションで、最大19階建て高さ60メートルのマンション群はまるで城壁のようだとも言われ、地域住民からは「住環境の破壊だ」などと反感を買い、東京地裁に建築禁止を求める仮処分申請が出されるなど、揉めに揉めている。

 問題となっている一帯は都立大跡地を除き、建物の高さ制限(12メートル)がある第一種・第二種低層住居専用地域となっている。都立大跡地だけは高さ制限が設けられていない中高層住居専用地域のため、高層マンション建設が計画されたわけだが、計画通りに建築が進むと問題のマンションだけが飛び抜けた高さとなってしまうことになる。これに対して地元住民は、景観が損なわれ、日照権の問題も発生し、圧迫感も相当なものだとして反発を強めているのである。工事中の振動・騒音公害も深刻だという。

 ここで焦点となるのは、おそらく2点。「建築面積を抑え、周辺環境にも配慮した。都心部で一戸建てを買える人は限られるので、私たちは住宅供給という使命も背負っている」とする長谷工の主張と住民の一部が言うところの「住環境の破壊だ」との主張のどちらに説得力があるかということがまず1点。もうひとつは、異論はあるが、法的にも手続き的にも問題がない長谷工の事業を、一部の住民の権利を守るために差し止めることが可能なのかということである。

 売却(用途変更)の際に行われるべきであったかもしれない制限の変更がなされなかったという、いわば制度運用の不備があったのかもしれない。しかし現実に制限が行われなかった故に企業が跡地を購入し、マンション建設に踏み切ったのである。そこにそれほどの問題があるとは思えない。百歩譲ってそれに抗議するのなら、長谷工ではなく、そういった制限変更を行わなかった行政に対して運動をすべきなのであって、業者にすべきではないと考えるのが普通の感覚である。

 確かに巨大なマンションが近所にいきなり建てば、驚かされることになるかもしれない。しかしそんな事例は全国至る所にあるので、問題となるのは住民が言うところの「長年守り続けてきた住環境が破壊される」ということに集約されると言っても良い。

 気持ちはわからないではない。しかし結論を先に言ってしまえば、その運動はおそらく多くの国民の支持は得られないであろう。なぜなら多少のやっかみもあるだろうが、何よりそんな素晴らしい住環境は彼らの努力によってのみもたらされているものではないからである。

 その素晴らしく快適な住環境は彼らによってのみ維持されてきたのではなく、大なり小なり他の地域の犠牲によって成り立っているものである。この狭い日本、しかもその首都東京なのである。建物の高さ制限自体に考えるところもある。そんな快適なところに住んでいるからといって、電気も使えば、ゴミも出すだろう。しかし発電所もゴミ処理場も他の場所にある。空港や軍事施設などの存在も肌で感じたことはなかろう。これは土地の値段の問題だけではない。極端な言い方をするなら、それらの施設があるおかげで不安を抱えて生活している地域住民の犠牲の上に成り立っている環境なのである。
 となれば、地元住民が主張している権利は、何よりも優先して守られる性格のものではないと考えるのが普通なのである。

 反対運動を見る限り、19階建て60mのマンションを「太陽と空と静寂を奪う、長谷工の巨大マンション計画!」「城壁マンション」などと紹介している。周囲が低いということもあろうが、19階建て60mで巨大マンションとなるのなら、うちなどは超巨大マンションである。しかし周辺から太陽も空も静寂も奪ってはいない。少なくともそんな抗議を受けたことはない。
 「不当に高い値段で仕入れを行った業者がそのツケをマンション購入者にも押し付けようとしている」にいたっては余計なお世話と言う他はない。そんなツケを承知で購入を決めるお客がいるのである。
 極論すれば、環境の良さが土地の値段を支えており、そんなマンション群が建つことで価値が下がるというのなら、自分たちでその跡地を買えばよかったのである。

 私は長谷工コーポレーションをはじめ、そういった企業と何のつながりもない。ゼネコンにも良い印象は持っていないが、こういった騒動が起きるとそのたびに複雑な思いに駆られてしまうのである。
 私としてはこういった騒動が、住環境と犠牲となっている地域の問題について考えるきっかけとなることを願っている。




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