小さな一歩娘が最初に覚えた言葉は、「ちょうちょ」だった。 2歳の頃、公園で遊んでいたら、男の子がやってきて かごに入ったちょうちょをくれたことがあった。 弱っているように見えたので、一旦は家に持って帰ったものの 娘と二人でベランダから逃がしてあげた。 その後、昼寝をした娘を一人置いて少しの間、私は買い物に出かけてしまった。 戻ってみると、目を覚ました娘が涙をいっぱいためて玄関に。 いつもなら、泣き叫んでいるはずなのにその時だけはちょっと違った。 「ママ~、ちょうちょよ~」と手を取って、私をベランダへ連れていった。 戸を開けてみると、ちょうちょが網戸に止まっている。 「ほんとだね。さっきのちょうちょだね。」 そう言ったとたん、まるで私の帰りを待っていたかのように どこかへ飛んでいってしまった。 そんな娘が、きのうぽつりとつぶやいた。 「小さい時ね、ママがいなくなったらどうしよう・・・。 そればっかり、考えていたんだぁ。」 彼女ももうすぐ16歳。 私も安心して、小さな一歩を踏み出してみた。 一生の終わりに残るものは 我々が集めたものではなくて 我々が与えたものである ジェラール・シャンドリー |