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カテゴリ:ひとり言
私の祖母(ウメ←仮名86歳)には、去年から親しくしているボーイフレンドのおじいちゃんがいる。週に何度か通っている地域の老人センターで二人は出会った。
始めはそこへ行くのを頑なに拒んでいたウメおばあちゃん。でも、彼女の介護をしている私の継母Eちゃん(AYSA父の再婚相手)の強い勧めで渋々ながらも通う様になった。 周りからは嫌がっているおばあちゃんをひどい!とか、非難の声がEちゃんに上がったけどEちゃんの考えは、今まで何十年も前に旦那さんを亡くしてから幼い子供達を育てていく事にいっぱいいっぱいで、過ごして来たおばあちゃん。贅沢もせず、旅行などにも行かず人生の大半をずっと子供達と孫達の成長だけを楽しみに生きてきたおばあちゃん・・ でも、数年前から大病を患っていて今は入退院を繰り返している。 後、持って2、3年の命・・・医者からもはっきりと宣告された。 残り消え行く命に今、私達が出来る事・・・Eちゃんも彼女なりに色々考えての勧めだったんだよね。少しでもおばあちゃんに、色々な「楽しさ」を味わって欲しかったから・・・。 始めは嫌々ながらにセンターに通っていたウメおばあちゃん。 でも1週間、1ヶ月・・・と通って行く内に彼女の中でも徐々にだけど変化が現れてきていた。様々な人達や出来事に触れ合っていく内に色々な事に興味を持ち始めていった・・・。 ある日、センターからの帰り道、ウメおばあちゃんを乗せた送迎 車をEちゃんが迎えに行った時、二人の所に一人の老紳士(ウメ蔵さんと名付けよう)が近付いてきた。彼はおばあちゃんの所に真っ直ぐ歩み寄ってきて 「初めまして、私はウメ蔵と申します。今日、ずっとあなたの事を 拝見させて頂いていて、なんて可愛らしい方なのかと思っておりました。宜しければお名前をお聞かせ願えませんか?」 と、話し掛けてきたのだ!!ウメおばあちゃんもEちゃんもビックリ!!そんな粋なセリフを言ってきたウメ蔵さんは、おばあちゃんよりも3歳年下の、でも83歳!!! すごいよーーー!!COOLだよー!!! 何が大変だったかって帰宅後のウメおばあちゃんの取り乱しよう!「わたしゃ、あんなじーさまには興味はないよ!」なんて憎まれ口を叩きながらもこの次に会える一週間後まで、さー大変! 「Eちゃん、新しい洋服を買いに行くよ!ババくさいのじゃなくって可愛いのにしておくれ!」(真っ赤のひらひらセーター購入) 会う日の前日には「パーマ屋さんに行くよ!」などなど・・。 深夜3時まで連日連夜のファッションショーの日々は続き、それに付き合うEちゃんもヘロヘロになってた(笑) 二人はとても静かに仲がいい。 センターにいる間は何を喋るでもなく、ただ隣同士に座っていて時折り目を合わせては微笑みあってるそうだ。 お互いの熱い想いを垣間見れる時は朝の一瞬の時だけだ。 送迎車に、おばあちゃんよりも一足先に乗っているウメ蔵さんは、ウメおばあちゃんの姿を見つけると我先にと入り口の所へ迎いに出て、病気の後遺症の為、麻痺が残っていて震える手を、それでも真っ直ぐに力強くウメさんに向かって差し出す。その腕の存在を認めた瞬間、繋がれていたEちゃんの腕を振り解いておばあちゃんは、「ウメさん」になって、ウメ蔵さんの腕にしっかりと手を委ねる・・・。 「あぁ、おばあちゃん・・・ウメさんは、この一瞬の為に今を そして又、新しい一週間を生きているんだなって、なんだか胸が熱くなりました」ってEちゃんが私に送ってくれた手紙にも書いてあった通り、「ウメさん」は今を、そして この一瞬を、その一瞬の為に、精一杯 今日も生きてるんだ・・・。 去年の暮れに倒れて生死の境を漂って長期入院してた際に、甥っ子が家の前をウロウロと杖をついて歩いている老紳士の姿を見かけた。 事情を聞いて外に出たEちゃんが出会ったのは何とウメ蔵さん!! 麻痺で杖をついていて、一人でも歩くのもままならない彼なのに。 ずっとセンターに姿を現さないウメさんの事が気になって意を決して様子を見に来てくれたそうだ。それこそ命をかけて・・ね。 Eちゃんから事情を聞いたウメ蔵さんは、ただ一言「お大事に」とだけ言って又、ゆっくりと元来た道を戻って行ったそう。 入院中のウメさんにその出来事を伝えたら「あんな、じーさま お断りだよ~~~!」なんて、例のごとく憎まれ口全開に喋ってたけど。それでも彼女の瞳が少女の様にピカピカに輝いていた事を私とEちゃんは、知っている。 センターに通う様になって、そしてウメ蔵さんという人に出会えて恋(?)に落ちて・・・本当に私のおばあちゃんウメさんは変った。なんとウメさん御年86歳。使用している香水は、シャネルの5番!!そして、ほどなくして黒い髪の毛まで生えてきたのよーー!!! 今まで私達家族が知らなかった「ウメさん」が、どんどん顔を出してきた。ある日ウメおばあちゃんがEちゃんにポツリと言った。 「Eちゃん、私の子供達はみんな、私の事を地味で外へ出るのが嫌いな人間なんだってず~っと思って来たみたいだけどね、全然違うよ!わたしゃ洋服だったら真っ赤や派手派手のが好きだったし、外に出るのだってほんとは大好きだったんだよ」 って・・・。 あぁ・・・私達はなんという長い間、本当の「ウメさん」を 知らずに過ぎて行ってしまったのだろう? 私達のイメージする所の「おばあちゃん像」に勝手にウメさんを押し込んでいた。長い 長い 間・・・本当の彼女の心なんて誰一人知ろうともしなかった。でも・・・「告白」した後にウメさんは一言。「でも・・・そんな事、息子達には内緒だよ!」。 おばあちゃんとウメ蔵さんの件で一番印象深かったのがボーイフレンドが出来たと聞いて喜んだのはEちゃんや私、おばあちゃんの娘始め皆、女性陣。私の父や叔父達・・男性陣は皆、一様に苦虫を噛み潰した様な顔・・・幾つになっても息子は息子。 きっと自分の母親も女だったっていう当たり前の事・・・認めたくないんだよねー。 昔、私はお見合いの資料請求のアルバイトをした事があるんだけど。ご年配の方達からの問い合わせの電話が結構入ってきてた。 60代から80代の方まで。皆、一様に「結婚はしたいけど子供達が反対で・・・」って悩んでいた。わからないでもないけど。 私の同僚は皆、彼等の様なご年配の方達から電話がかかってくる度に「この年になって、気持悪い!いやーねー!自分の親だったら絶対に反対する!!」って言ってたのね。 私も始めは同じ様に思ってた時もあったんだけど・・・。 なんか、今は違う思いだ。 人間は、皆生きる時も死ぬ時も結局は一人でいかなければならないんだけど・・。でも、生まれた時に、自分が生まれてくる為に努力をしてくれた母親や人間がいるように・・・。 いくら一人でしか死ねないにせよ、その最期に傍にいてくれる、手を握ってくれる存在が一人でもいるだけで、全然気分は違ってくるんじゃないかなーって・・。若くて元気な時はあまり意識する機会もないし生きていけるけど、ある一定の年になってきたら皆、一度は死への恐怖について考える時があると思う。 その時にもしも自分がたった一人ぼっちだったら・・・?? 恐い。恐い・・・。 私だったらきっと、どうしようもない恐怖が襲ってくると思う。 きっと誰かに傍にいて欲しいって切に願うと思う。 それは・・・ある人は子供や孫で充分なのかもしれない。 でも、ある人にとっては、その者達ではまかなう事の出来ない愛しい人の存在が、必要な人も、いる・・。 子供にとっては、先に配偶者に先立たれたり離婚した父、母が70代、80代のいい年になって再婚するなんてって。色々財産の事とか問題があるし、真っ先に「賛成!!」とは声を大にして言えない人の方が最多だと思う。でも・・・ 他の誰でもない。自分の「最期」を、「幸せ」を。 誰と、どの様に過ごすのか・・・それは、その人の基本的人権の一つなのかもしれないなぁって、ウメおばあちゃんとウメ蔵さんを見て思ったAYSAでした。 他のおじいちゃん、おばあちゃんのお話だったら、かわいーって微笑ましく思える事も、いざ自分の親が・・・??という立場になったらなかなかそんな風に考えるのも難しいと思うけど。 老いても人を求める気持・・・ いや、老いてこその切なる想いや、誰かと残りの時間を一緒に 刻みたいと想う心・・・。 でも、人によっては死に別れた旦那様や奥様をずっとずっと 愛し続けて想っていて・・・到底又、他の誰かと一緒になるなんて考えられないって思ってる方も沢山いらっしゃるだろうし、一概に何がいい事かとは言えないんだけど。当たり前だけど。 今のウメさんを見ていて・・・ 色々と思いを寄せる事の多くなったAYSAです。 人生の最終章に入った時、もし あなたが一人でいたならば。 最後は誰と一緒に時を、過ごしたいですか・・・・?? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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