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おんな鮎釣り師のホームページ

⑦野良犬のクロ・・・逃げろクロ!

暖かな日差しの当たる空き地のすみっこで、クロはよく子供達を日光浴させていました。
コロコロとじゃれあう子供達を幸せそうな様子で見ているクロ。
そんな光景を見ている私達の心も、春が来たようにポカポカ幸せでした。

ある日突然、軽トラックに檻を載せて、クロ一家を捕獲するために役所の職員がやってきました。
野犬がウロウロしていると通報があったとの事でした。
私達は「やめて~!何も悪い事してないじゃないですか」と抗議しました。
それでも網をもって追い掛け回します。
「クロ~、逃げろ~!」
頭のいいクロです。
そんなに簡単に捕まるはずはありません。
普段から崖を自由自在に駆け回っているんだから、鍛えられています。
子供達だって、すばしっこくすり抜けて行きます。
クロはなんなく子供達を連れてさっさと逃げて行きました。

ふふん、そんなへっぴり腰ではクロは捕まらないさ。
みんな内心そう思ったのでした。
裏に網を仕掛けさせて欲しいと言われましたが、答えはもちろん「やなこった!」です。
彼らはただ任務を遂行するために来た、真面目な職員さんです。
住民からの苦情を聞いて放って置く訳にはいかず来ているのはよくわかっていますが、私達もクロ一家を守らなくてはなりません。
「また来ます」と彼らは帰って行きました。

それから大慌てで、クロ一家の養子縁組大作戦が始まったのでした。



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