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ハイタッチの変形、両手をグーにしてつき合わせて。
「終わっちまったなぁ」 大きく描かれたパネルの向こうから射す夕陽。 ずれないようにきつくきつく縛ったハチマキをほどく。 準優勝、だってさ。ダッセェなぁ。 かきあげる髪。止まらない汗の間に一滴だけ悔し涙をしのばせて。 バシンと背中を叩いて先頭へ向かって。 「打ち上げいくぞ、打ち上げ」 (たまんねぇなぁ) あいつに付いていくと必ず酒が入るからなぁ、なんて思いながらも小走りに追いかける。 ばらばらの歩調で同じ方向を向かうそれぞれの影。 「何? お前も行くの? マジで?」 少しだけ驚いた声を背中に受けて。 (当たり前だろ?) 俺たちはやたらと馬鹿で馬鹿で、どうしようもないやつらだけど、きっと全員気づいていた。 体育祭が終わったら学校は急に静かになる。 まず就職組の活動が盛んになって、推薦組も試験だ何だカンダでいないことが増えて。 俺らが全員で何かをするのはきっとこれが最後で、それはとてもとても…… きっと、とても誇らしいことだった。 もしもこの後俺らが補導されて厳重注意を受けるようなことがあったとしても きっと俺らは今日のことを何十年経っても誇らしく思い出すんだ。 立ち止まる。追い風が気持ちいい。 きっと俺たちは、いつまでも「俺たち」でいられる。 それは、確かな確信だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.02.20 22:24:40
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