連日の異常気象、多発する少女誘拐未遂事件…と、不穏な空気が漂う東京都世田谷区。ある日、パソコン売場のモニターに「悪魔の警告」から始まる予告文めいた怪文書が現われた。翌日、若き天才囲碁棋士・牧場智久の対局相手・桃井四段が失踪。さらに、十二歳の少女たちが次々と殺されて。牧場智久&武藤類子コンビの推理やいかに。驚愕の本格推理。
竹本健治さんの「妖霧の舌」を読みました。
今作は「牧場智久&武藤類子」シリーズの2作目で冒頭から怪文章がパソコン通信を通して登場したり、同人誌などのオタク文化が描かれていますが、1992年という刊行年を考えると題材的に先進的な作品ですね。
更に意外な犯人像と特殊な動機も今から考えると時代を先取りしている感じがします。
また霧という小道具を得意の幻想的な文体で巧く処理し、終盤の追跡劇に良い効果を与えていますね。
どちらかと言えば、ミステリよりもサスペンス色を前面に押し出し、探偵役である牧場智久の推理に重きを置いていないのも成功しているのではと思います。
背景となる碁界も今作で広がりを見せており、智久の同年代の宿命のライバルとして際立った個性の桃井が登場しているのが印象的と言うか、主役のコンビを喰ってしまった感すらありますw
かなりのアニメオタクで肥満、不潔とネガティブな要素が多いながらも碁を打たせたら天才の智久ですら驚愕する才能という非常に面白い設定を貰ったキャラだと思います。
その桃井が何故失踪したのかという謎は魅力的ですし、真相も納得できるものでした。
今後のシリーズの行方を示す重要な作品ですが、期待が高まるものがありますね。