多分、37年振りに現れた「CREAM」の文字ではなかろうか。
MSGには数えられないほどの回数行っているけれども、アリーナ席につくのに、ある種「厳戒体制」とも言える取扱いをされたのは初めてのことだと思う。それはテロを警戒して…ではなく、ダフ行為を警戒してのことなのだというのは一目瞭然。何しろ、アリーナ席のチケットが軽く3000ドルを超えていたのだから。
私は初日から連続で3夜完全制覇した。
単純に感想を述べれば、1日目は「OK」2日目は「大変よろしい」そして最終日3日目は「困ったもんですね、クラプトンさん」といった感じでありました。
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これを見ると、いつものクラプトンのライブのように見える。
This photo looks like ordinary Clapton's Live photo... but
it is "Cream".
きっと、年令の高いアメリカ人の観客の中には、昔の(というかオリジナルのと言うか)クリームのコンサートを実際に観たことのある人は沢山いたと思う。だけど、解散後しかクリームを知らない私にとって「クリームのコンサート」は生まれて初めてのものだったし、NYよりも先に行われたロイヤル・アルバート・ホールのCDも聴かず、DVDも観ずに(つまり先入観なしで)クリームの登場を待った。
セットリストは、"TALES OF
BRAVE
ULYSSES"が加わった以外、ロンドン公演とほぼ同じで、"I'M
SO GLAD" で始まり、"THE SUNSHINE OF YOUR LOVE"
のアンコールでコンサートは終わった。
初日のオープニングの観客の興奮度は凄く、多分、ロンドン公演以上だと思う。とにかくアメリカ人はクラプトン大好きで、クリーム大好き(おまけにアイスクリームも大好き…?)なのであった。
私は生まれて初めて聴く「ナマ」の3人の演奏が本当に楽しみだった。
中学の頃からずっと彼等のライブ盤を聴いてはコピーし、バンド演奏をやっていたこともあって、ホンモノはどんなに凄いだろう?と単純に浮き浮きした。
The set list was almost the
same as at the RAH concert except they added the
song "Tales of Brave Ulysses".
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コンスタントに3日間調子が良かったのはジンジャー・ベイカーだった。
自分の(奇妙な)歌の後に、売店の宣伝をするところもロンドン公演と同じ。
Constantly, Ginger Baker played well
for the entire three nights.
And, same as at RAH, he was a sales person for their
souvenir shop.
なにしろクリームはアルバムでしか今まで聴いたことがないので、比較のしようもないし、36年前のサイケな若者達の演奏と、その後、紆余曲折を経て還暦を過ぎた三人の熟年(老年?)クリームとは違っていて当たり前だと思う。
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心配だったのはジャック・ブルースだったのだけれども、確かに「大丈夫?」と尋ねたくなるくらい痩せてて、足など、痩せ細っている私以上に細く感じた。クラプトンがヴォーカルをとっている間は、スツールに腰をおろして休んでいた。(スツール…というところがミソで、正面から見るとまるでちゃんと立っているように見えるのであった)
だけど、ジャック・ブルースのヴォーカルは想像していたほど衰えてなくて、どちらかというと、クラプトンの歌が上達したので、ヴォーカルのバランスは昔のクリームよりも取れているように聞こえた。
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曲の間に談笑?
ニューヨークタイムズ紙のコンサート評はそれほどよいものではなかったけれど、そもそも『昔のクリームの演奏に比べると…云々』というのはナンセンスだと思う。こうして、三人元気に揃って演奏できるだけでも凄いことだし、観客もハッピーな気分で若返って会場を後にしたと思う。
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余談ではあるけれども、友人から貰ったRAHでのライブ盤の中の"Politician"
だけど、この曲はCDで発売されているものよりもMSGでの演奏のほうが数倍良かったと思う。おまけに言えば、RAHでの"Politician"のクラプトンのギターは、中学生の頃の私のギターより下手クソに聞こえる。間延びしていて、全然良くない。あれだったら、もっと簡単にコピーできたと思う。
MSGでの三日目のクラプト唐ヘ、コンサートの途中で突然、やる気がなくなったのか、ちっともいい演奏をしなくなった。『クリームとして、今夜は最後の夜。ガンバロー』なんて気持ちはきっとクラプトンにはないのだろう。
それまで、初日、二日目と座ることなかったアリーナのステ-ジ前の観客が途中で座った。わかる人にはちゃーんとわかるのだ。
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こうして全身を眺めると、あのスラ~っと細く
こじんまりとしたお尻のクラプトンはもういないのだった...。
最後に、本当に余談ではあるけれども、友人とMSGの録音を聴いていて、ふと、"N.S.U."
がある日本の童謡にそっくりなことに気付いてしまったのだ。
それは...♪山寺の、和尚さんは、鞠はつきたし鞠はなし♪という曲なのだ。一度そう聞こえ始めるともうどうしようもなく、ジャック・ブルースの真面目なヴォーカルが「ヤマデラノ!オショサンガ!マリハツキタシマリハナシ!」という風に聞こえてしまって止まらない。おまけにクソ真面目にクラプトンがコーラスをつけるので、おかしさは頂点に達して『クリームがパクッてたとは、今まで誰も知らなかっただろうなあ~』なんて言いながら大笑いが止まらなかった。
クリーム再結成は熱狂と興奮と、そして大笑いを残してくれた。
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