今まで、かなりの回数、パリには行っているけれど、
今でも忘れられないのは、大学の夏の1学期をパリの学校で過ごした時のこと。
その夏の間、私は学校が準備したサンジェルマン・デ・プレにある、小さなホテルに暮らしていた。朝、7時に起床し、1階にあるカフェテリアで焼き立てのクロワッサンとカフェオレで目を覚ます。
そこから機材や印画紙を抱えてメトロに乗り、学校へと向かう。
クラスは9時から始まり、たいてい午前中の講議が終わると、近所のパン屋でサンドイッチを買う。
“バゲット”と呼ばれるフランスパンに、ジャンボン(ハム)とフロマージュ(チーズ)という、いたってシンプルなサンドイッチを持って、近くのエッフェル塔前の公園まで行き、ベンチに座ってランチを食べる。私はそのルーティーンの虜になっていた。
午後はほとんど課題のための撮影にでかけた。
だけど、時々、ウィンドーに飾られたきれいな靴やカバンに気持ちが行くこともあった。
私は日によって、35ミリのニコンか、中版のハッセルを下げて出かけていたのだけれど、
ニコンを持って出ると、ファインダーを覗きながら歩くのが癖になった。
特に24ミリのレンズを付けて覗いていると、やたらと楽しかった。
時にはファインダーを覗いてヘラヘラ薄笑いを浮かべながら歩いていたので、
スレ違う人達は異様に思ったに違いない。
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