本丸より (48)

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The End
March. 7 (Sat)

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And in the end
The love you take
Is equal to the love you make.

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とても長い間、ピアノが弾きたかった。

コロンビア大学の寮のロビーにはグランドピアノが置いてあって、真夜中に弾きに行くと、青年が、ものの見事にジャズを弾いていたりして、とても単純に、どうしてコロンビア大学で学べるくらい勉強ができるのに、オマケみたいに、こんなに凄いピアノが弾けるのだろうと、半分悔しかった。
その頃、スタインウェイ(ピアノの中の王様のようなピアノ)を自宅に持っている人がいて、そこで弾いたのが多分、最後だったと思う。

わたしが幼い頃から弾いていたピアノは、私がニューヨークに居座っている間に、誰も弾く者がいなくて邪魔だということと、家が変わるきっかけで処分された。

相談もされず、勝手に、わたしのピアノは売り払われてしまい、もちろん、私は号泣した。

二束三文のお金と引き換えに、あんなに見事な材質のピアノがなくなってしまった。

そして今日。ピアノはもう無理だからと、電子ピアノが届いた。
久しぶりに見る88の鍵盤は、覚えていたよりもずっと少ないように見えた。
電子ピアノの良い点はヘッドホーンで聴けるから、好き勝手にいつでも弾ける。だけど、鍵盤のタッチはとてもいいとは言えない。それは仕方のないこと。

わたしには、どうしても弾きたい曲があって、それは、もう今は亡くなった日本の世良譲さんがライブで弾かれた "The Shadow of Your Smile" で、ピアノを弾くことを仕事にしている人に会う機会がある度に、その曲を弾いてもらうのだけれども、どうしても、世良さんの他のどのライブでもなく、その時のそのライブに勝るものがなく、多分、永遠にないような気がする。
その演奏もレコードも、もう30年くらい前のものであるし、もちろん廃盤になっていて、私が持っている音源だけが宝になった。

この演奏には「魔法」があるって、よく思う。

世良さんの "The Shadow of Your Smile" は、とても力強くて、エレガント。彼は余りペダルを使わない奏者で、その、早い指さばきと、コロコロと、また、弾むような音が心地よく、そして優しい。

わたしはクラシックピアノをやっていながら、譜面が苦手で、耳で聴く方が確実にその「音」を探せる。

世良さんの音を探して、見つけて、同じ音がする。すごくハッピー。

鍵盤と音と格闘しながら、きっと、天国の世良さんが

「へったくそだなあ~~」

と笑っているような気がした。それと同時に、もう世良譲さんがこの世にいないことが悲しくて、涙が流れた。

 

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