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カテゴリ:紫煙のゆらぎ
![]() 関淳一翁 悠然と難曲中の難曲R. Wagnar. トリスタンとイゾルデ前奏曲を指揮する この写真は本人確認の上 Up の許可をもらっています。 紫煙のゆらぎ・市民同士 前半 関淳一と奥さま あなたはごきげんよろしほでけつこです。 あなたのつごうのよいひにぼくのあとりえにおいでんなさい。 とびどぐもたないでくなさい。 くろいぺんぎんふくきない たべもののみものもつて いりぐちかたがきすてておいりんなさい たま猫 俳 宮沢賢治の「どんぐりと山猫」の冒頭にある招待状である。 ほんたうは、かねたいちろう様・あしためんどなさいばんしますので。 市民同士の談笑は予定の時間より早く午後5時頃から9時すぎまで続いた。 生臭い話はカタイこと抜きのこんにゃくで。極力避ける。 今日は皆んな一市民同士で、この玉地山房で楽しく談笑しよう。 僕のアトリエには小さなポッペン・びいどろがある。 奥様と、ご同伴されたお2人と供にご来訪された関さんは。 「おおこれは」といって、ぽっぺんぽっぺんぽっぺんと吹き鳴らした。 はんぱぢゃない大型の万華鏡には、関さんら全員が驚嘆のまなざしで見入っていた。 関さんが聞きたがっていた 「巨星手塚治虫とゐた時間」 のさわりから始める4人だけの講演会。 休憩時間に寿司をつまみビイル・日本酒飲み、笑い、BGMに東海林太郎を聴く。 此れがいけなかった。 麦と兵隊。 徐州徐州と人馬は進む徐州居良いか住みよいか 「玉地さん歌お上手ですね」 と奥様。 「2番の歌詞は嘘だ」 友を背にして途無き途を行けば戦野は夜の雨すまぬすまぬを背中に聞けば そんな事出来るはずが無い。 負傷兵を後方へ下げる事が出来ないときは、自決用の手榴弾を渡して捨て去ったはずだ。 皇軍が沖縄でしたことは史実なのである。 僕の故母親の現存する兄貴は 白骨街道と言われたビルマ・インパールの悲劇を生き延びた人である。 重い三八銃などさっさと捨て、倒れた戦友の食料や軍靴を奪い取り、 現地民の食料を略奪し尽くし、殺し尽くし、焼き尽くすいわゆる三光の限りを実行した。 女性たちにひどい仕打ちをし、群れを作って逃げ回り、最後は英国軍の捕虜となった。 そして、諜報活動に加担して、大量の砂糖を持って、 帰還船の中で大威張りで帰ってきた話を、まったくの奇麗事にすり替えて僕に話す。 海ゆかば水に浮く死体 山ゆかば草に腐りゆく死体 おおぎみの辺にこそ死のう かえりみなどしない ひどい歌詞だ。 我がおおきみに召されたる命栄えある朝ぼらけ讃えて送る一億の歓呼は高く天を突く いざゆけつわものにつぽんだんじ どれほど多くの学徒が餓死したのか。 おんしのたばこをいただいて明日は死ぬぞと決めた夜は荒野の風もなまぐさく 「朝日」 というたばこであった。 どれほど多くの哀しみとともに、 鹿児島知覧の飛行場から特攻に若い命が飛び立ったのか。 天皇陛下 ばんざいなんて言う筈が無い。 「おかあさん」と叫んだはずだ。 年若いあなたがた。 「聞けだつみの声」という本を読んでください。頼むから。 「靖国」という映画も機会があれば見てください。お願いします。 日本はフランスのような市民革命を経験していないから、 本当の自由・自治をあたまからわかっていない。 政府・お上が自由と幸福と健康で文化的な生活を保証してくれるから大丈夫。 国民年金馬鹿騒動、必ず私くしの内閣でと言った腰抜けは、 途中で投げ出して世界中の物笑いになった。 そんなヤカラを信用していまさら文句を言うほうがおかしい。 ロシア人は金が手に入ると食料を買い込み冷蔵庫へ詰め込む。 フランス人は政府をまったく信用しない。 北欧の人は十年以上の将来のため納得ずくで税金を拠出する。 道路特定財源を半分福祉に回せば全てが解決するのに、 東国原効果にすがり、考えの浅い人々はデモもストライキもしない。 とんでもない無知と勘違いだ。 話がイケナイ方向へ曲がっていくので 音楽をルイ・アームストロングとエラ・フィッツジェラルドのジャズに変える。 関さんは、僕の説教強盗のような話に毅然として的確に彼の正論で答える。 懐の深い大きな人物だ。 僕がまくしたてると、ほとんどの人々が黙り込み的確な返答も無く、 のらりくらりと逃げられて、その人々の答えが出てこない。 関さんはじっと僕の目を見続けて、そして、答えが返ってくる。 同意と、ちょっと見る方向の違う答えが返ってくる。 流石リーダーはしっかりと芯柱を持っている。 朝日新聞論説主幹若宮敬文氏と話した時を彷彿させる。 アルコールと雰囲気がアームストロングのガラガラ声で少し和んできたので、 僕が今だにはまりつづけて40年の、だれでも指揮者の実践に話が彷徨いこんだ。 ドイツ音楽の魂を実感できる実験のため、ハンス・クナッパーツブッシユの ニュルンベルクのマイスタジンガー序曲を探したが、出てきた音楽は、 R. Wagnar の難曲中の難曲トリスタンとイゾルデ前奏曲。 このマイスタジンガー序曲はイスラエルの国では長く演奏禁止であった。 ナチがユダヤの人々を悲劇の部屋へ押し込む時この曲が流されたから。 でも、勇壮で歯切れ良く、素晴らしい響きでありながら、 初心者にも簡単に理解できる譜面で、だれでもいつでも指揮棒を振る事が出来る。 コントラバスのうねるような響きとともに次第に高揚して イゾルデとトリスタンの悲劇の運命が交錯するところで、 音楽にあわせて降っていた指揮棒を僕は関さんに渡した。 何のためらいも無く、関さんは、この難曲を振りはじめた。 つづく。 玉地山房主人・ ATORIE TAMAJI ・漫画家 玉地 俊雄 you tube ***** balitamaji ( 日本語版 ) *** sakamotoakane ( English ) http://plaza.rakuten.co.jp/balitama/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.06.26 06:37:52
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